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Musee Galliera Annex.のオープニング展、“C.Balenciaga”と“Comme des Garcons"を観る。

 その何もかもが、一新されてた、この街の服飾美術館アネックス-Musee Galliera 、
アドレス、スペースそしてキュレター。

 これだけの”新しさ”を揃え国家が差し伸べる目的とは?
此処でも、”文化は武器”と言う此の国の変わらぬポリテカルな発想と自信の元での今回のオープニングで有り、
その初回の展覧会であった。

 此処には、再構築した事の”目的の新しさ”とこの街がモードの世界で今後もより、
プライオリティを持って君臨し続けられるためをも示唆するポリティカルなパワーと自信保持と
その意気込みが伺われたMusee Galliera Annex.の新装開店である。
新たなアドレスは、オーストリッテ駅の近くセーヌ川に隣接する元ドック跡地に出来ていた建築空間を利用した。
ここには一足前にI.F.M.も移転して来ている。
従って、今後も此の国がモードのイニシアティアティブを執るための、
歴史と教育と新たな情報資料としてのアーカイヴの集合一体化及び、
パリジャンたちのための新たなセーヌ川沿いのホットなラグジュアリなスポット構想が此処には在る。
www.paris-dock-en-seine.fr

 あらたなこのMusee Gallieraのキュレターに就任したのがM.OLIVER SAILLARD.
彼は以前は装飾美術館の中に在った”モード美術館”キュレター。
'10年に彼は「現代モードの理想的な歴史」(Histoire idéale de la mode contemporaine)を出版し、
その後,この本のために収集されたもので展覧会を装飾美術館で企画した。
主に、プレタを代表とするモードの世界に大切な創造性と美しさが丁寧にヒストリカルに感覚よく
そして、スマートに表現出来るキュレター。
所謂、僕流の「頭よし、センスよし、見栄え良しの”三方良し”」を備え持っている人物。
 その彼がチョイスした今回のオープニング展の出し物が、
即ち、彼のこの世界で与えられた新たなその立ち居場所の決め所として彼が選んだのは
“C.Balenciaga”と“Comme des Garcons"。
それぞれが与えられた1室、1室での展示方法を採っている。
“C.Balenciaga”展は彼の仕事の全盛時代と言われている’50年代を軸としてそれ以前と
彼が’68年に死ぬ迄のものをオリビエのセレクションで展示。
その展示方法はあくまでもクラッシックな博物館展示方法をあえて使っている。
多分、それによっての残された物が持つ”歴史的なるものの重み”を表現したかったのであろう。
基調色は“黒”。
このようにC.Balenciagaをじゅっくりと量も含めて見たのは久しぶり。
ここに歴史の凄さを文句なく感じた素晴らしいしあわせな展覧会だった。
 もう1室が“Comme des Garcons"展。
此処には、いつもの川久保玲の流儀による展示が為されてあの、’12S/Sコレクションが
33体列んでいるだけの潔い、川久保玲流お見せしますよ、展である。
と言う事は全て、“白”従って、タイトルも“White Drama".
自心が持ち得てしまった、立ち居場所とは裏腹な彼女が持っている一面と”夢”、
”乙女チックな”人生へのオマージュであろうか?
此処ではその展示方法として半円のドームを透明な塩ビで構築し、
ここにこのデザイナーが女とし持ち得ている”処女性”を封じ込んでしまったかのようなまでの
展示手段にもこのデザイナーらしさの自我の強さがまた一つのスタイル/様式を見せる。
余程、川久保さんは先シーズンの”白”のコレクションに愛着と自信を持ったのでしょう。
僕には、以前の”コブドレス”('97)以来の“特異性”が存在する最近では彼女らしい
力強いコレクションであると思っているのでじゅっくりと見れた事はうれしかった。

 馴染みが余りない僕にとっての”オートクチュールとは、その美しさとは?”一言で言えば、
『人間の手が表現出来、感動を与えられうる美しさの一つである。
この街が文化として自慢し武器に迄しているオートクチュールの”立ち居場所”とは此処にしかない。
その無名なる人間の手が紡ぎ出す素材と工芸の美の手間の集積と調和を
時代性と着る人の特徴を多感に繊細に感受してディレクションされる世界だと信じる。』

 多分、オリビエも今回のC.Balenciagaの作品を集める際にこゝろした根幹はこの事であろう。
『人間の手によっての工芸的なる美しさに委ね、時代観を感じさせる迄のシルエット群。』
これらの素晴らしさと深みとそこから感じられる感動をC.Balenciagaと言うクチュリへの作品を通じて
表現したかったのではないか?
 もう独りの“Comme des Garcons/川久保玲"からは
彼女が生み出して来た数多くのしかも、同じモードの人間たちが余りにこの世界が
既に、整理区画化された世界である事に対して彼女が独立独歩、為して来た多くの挑戦戦歴にリスペクトし、
又、その結果としての、“Comme des Garcons/川久保玲"が創造する”モードの特異性”に感動と意義を見出し、
ここに初めて、今後のモード世界が伸展する新たな可能性へ繋げる何かを見て感じ取ってもらいたい。
この様なこゝろの有り様が在ったのだろうと僕が見せて頂いて感じた事であった。

 当然、此処でこの二つのクリエーターの比較が生まれる。
しかし、自ずとこの二人の立ち居場所は違っている。
解り易い言葉での”オートクチュール”と”プレタポルテ”。
これによって創られる構造も工程も関わる人たちもそして、最後にはビジネスに至る迄全く違っている。
最近の僕流の言葉で言切ってしまうと此処には
“工芸性が生み出す美”と”造型性が生み出す美”のそれぞれの美の所在が違いによって袂を分かち合って
自分たちの立ち居場所に崇高と立っているこの二人である。
 
 従って、僕はC.Balenciagaからは“手が紡ぎ出せる可能なる美の豊饒性、
それらを優雅、優美な迄に時代のモラリティに准じて品格あるものに
彼の持ち得たバランス感覚でまとめ上げた、彼の素晴らしいこゝろと自信と誠実さを
彼の為した”技”から感じ今日、見てもC.Balenciagaには“美しさ”が在り、
その時代での斬新さから”カッコ良さ”も感じられる。
例えば、晩年の、’67年の作品(#128)フラットな生地をカーテンの如く身体を優美に覆い隠したローブは
パターントワレを使わず、ボディーで組み立てられた見事なドレープが生み出されたローブになっている。
そして、当然ですが彼の美しさとは品性が感じられます。
ここに、この街が自負する”オートクチュールの神髄”、『エレガンス』が創造されています。

 “Comme des Garcons/川久保玲"からはやはり”造型性”が先に目立ったが、
暫くの時間、この部屋に立ちすくんでいたが然程、これらの白いの“造型物”からのノイズは感じられなかった。
今回はまた珍しく、彼女のレベルでの”工芸性”としての”白い薔薇”のコサージュを随所にバランス感を
出すために強調し、温もりさえ感じさすニットアイテムも比較的多く使われたコレクションだったため、
最近の彼女のコレクションにしては“工芸性”が多く感じられたものだっただろう。
が、やはり、このデザイナーの身上は“特異性を感じる迄の造型性”でしかない。
此処には変わらぬ、以前からの彼女の人間性の根幹に所在する
”自由さとしての、人と同じ事はやりたくない”が読み取れ,それが感動迄を生む凄さが在る。
そして、彼女の”造型性”が自身の生き方の想いに重ねて見られる眼差しも心地良く感じつつ
きっと、彼女はこのシーズンの作品群が好きなのであろう。
 それとこのシーズンは使っている素材が上質で品を産み出す迄のものをこれも久し振りに使った事で
コレクション全体にも”品格”が感じられた(Silk Satein,Silk satin-organdy,Silk wool gabardin,など。
此処数年は殆どがナイロン、レーヨン合繊系と綿がメインであった。)。
もう一つは、このコレクションでは4人の助っ人を使っている。
被り物に3人と、ハンドペインティングに独り。
彼等たちの仕事はそれぞれが今回のコレクションに於ける”特異性”を創造する事に
大いに力強い味方であった事も見逃せない事実である。
 
 最後に、この二人のクリエーターたちの作品を見て思い、感じた事は、モードの世界の変化でした。
双方のメゾンが活動し始めた’14年(~’68年没)と’82年の、
このたかが、70年程の隔たりでモードがこのように変化変貌した事です。
或る意味では“許容”されたと言うか、”モラル”の変質或いは、”含羞”の消滅化。
又は、“何でもあり化”になってしまったと言う事です。
しかし、この根幹は“自由”の在り方の変革と変貌でしか在りません。
これが時代が変わったと言うことに尽きるのでしょうか?
 ありがとう。
http://www.anothermag.com/current/view/1893/Olivier_Saillards_Comme_des_Garçons_White_Drama__Christobal_Balenciaga
文責/平川武治:オルシェット街にて、:平成弐拾四年四月壱拾参日:

投稿者 : editor | 2012年04月15日 08:35 | comment and transrate this entry (0)

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