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パリ・コレクション-ここ3シーズン、成長し続けるUNDER COVER/2017/春・夏コレクション。

「モードのキャピタルは”RAP・WORLD"に色目を使い始めなければならない。」
 景気の悪さがストレートに見えてしまうのが、巴里のファッション・ウイークの怖い
ところだ。ジャーナリストたちはプロが少なく、バイヤーたちは古参が多い。
その中で、ブロガーと称する若者たちが”すきあらば”と言わんまでのセルフ・プロパガンダで
会場の前だけは異様な空気と盛り上がりを見せる。が、”ゲットー”の中は変わらずのこの世界
独特な淀みしか感じられない。当然だが、この空気感はその後、始まるランウエーのコレクションの表情と顔つきにも漂う。

 街の顔つきも当然だが30年前とはすっかり、変貌した。
判りやすく街の表層は”綺麗になった。”だが、昔の否、本当の「巴里」を生きてきた人たちに
とってはその全てが本当に”遠い、いにしえ”の風景になってしまったと嘆く。
 これは何も巴里という街の変化だけに限ってはいない、この街のモードを同じように30年も
見続けている僕のようなものには”モードのキャピタル”も同じベクトルで変化し始めなければならないと感じ始め、一つの時代を脱皮しようと、変わり始めたシーズンだった。

 「誰が、新しい顧客なのか?」「誰に売れば、モードとして輝きが廃れないか?」
「誰が金持ち新興スノッブ人種なのか?」「誰がパリ・モードを美しく着こなせるのか?」

 
 そんなこの街のメタフォルモォゼの近い過去として一番、ノスタルジックにメランコリックに思い起こさせてくれるのが’60年代半ばの”ジャズ イン サン・ジェルマン”だろう。
 例えば、既に、YSLが亡くなり、つい先月もS.リキエルも亡くなった。彼れらたちの時代が
どんどん遠ざかってゆく。それはオーディエンスも然りである。
 こんな懐かしい時代のアトモスフェールとジャズをテーマ・コンセプトにとてもハッピーな
コレクションだったのが、UNDER COVER、高橋盾が見せてくれた世界だ。
 素材が勝負の時代にジョニオ君が選んだのは”ニールド・パンチング”による異素材の組み合わせという、こちらのデザイナーにはまだ高価でこの手法が一般化されていない世界。
ここで、白人デザイナーたちから1歩リードを取った。
 ローブやトップスにこの手法で”JAZZ AGE"なるモチーフで彼のポジティフな世界を見せてくれた。ここに漂っていたのは「メランコリー」「ノスタルジア」そして重なる、「ロマンティック」や「ポエジック」が表層に転写によってデコされてた世界。極め付けのアイテムはこのデザイナーの凝り性な性分がレザーブルーゾンに現れる。あのM.レイの写真に見られる音符記号などが嵌め込み手法で丁寧に、豪華にブルーゾンになる。全体的には”ストリート・テイスト”をラグジュアリィーにまとめたシーズン。そこにも彼が提案する”ストリート・エレガンス”が溢れる
うまさ。このうまさは、彼のコレクションが年々、評判を呼ぶまでの上手さの証であろう。
 彼が上手いもう一つはいわゆる、”小物類”のデザインセンスとそのまとめ方である。これらによって、より、「UNDER COVERの世界」が耀く。
 フィナーレはこのメゾンも「トランス・ジェンダー」、メイクもすっかり変え、スーツの素材も打ち込みのしっかりしたメンズ素材で仕立てられたボディーフィットしたスリムなボーイッシュ・スーツ。カッコいい!!
ありがとう、ジョニオ君。
文責/平川武治:巴里、ピクパス大通り。

投稿者 : editor | 2016年10月11日 02:15 | comment and transrate this entry (0)

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