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東京でのコレクションの前に、【日本人デザイナーはどのようなレベルでウケているのか?PARIS 編】

はじめに
 望むと望まないに関係なしにそのカルーセルの中に嵌ってしまえば、自然の流れで再び、コレクション発表の時期がやって来る。
これは巴里も此の東京も同じである。
だから自分たちも【巴里・コレデザイナー】と自負し、同じように勘違いをし、思ってしまう結果になる参加デザイナーが多くなるのだが、本当に、今ウケていると言われている日本発のデザイナーブランドはどのような状況の元で一人歩きし始めたのだろうか?
 昨年の秋にまとめたレポートをここで、此の時期にご紹介。 

一つの眼差し/———アッセンブリッジが上手なデザイナーたち
 日本人はその参加が多くなったデザイナーたち。そして,この国の文化庁が主催しているANDAMでTOGAと口の巧いブランドが貰うまでになる。
 日本人デザイナーたちはここに来て一つの段階をクリアーした感が在る。
『アッセンブリッジが上手なデザイナーたち』という資格を貰った様だ。

これは前回も書いたようですが,今は時代が追い風を吹いている。
この時代の追い風とは、これからこの街、パリもそして、他のEUの都市はこれらの街に住むイミグレーターたちの新世代層が中心の新たな消費者層として確実に『大衆消費社会構造』化へ行くこと。これは、取りも直さず、かつての、’90年代中期以降の日本の状況である。(参照LePli-0号)
そして、具体的には、先ず,進化した新素材が享けている時代性。それらの進化した素材を案外と簡単安価に使いこなせる状況を持っていること。そして,生産構造が未だ確りしている事からのクオリティとデリバリーが他の外国人若手デザイナーたちと比べると良い。それに情報が発達している所からコピーや組み合わせが巧く出来こなせるデザイナーが即ち,器用さがいかせるデザイナーたち。しかし,オリジナリ性は弱いか無いが今は円安で価格が適当に買い易い。従って,買っておいとけば『Made in TOKYO』がセールスポイントにもなり売れる。この状況はメンズもレディースも同じ状況をもたらし始めている。TOGAにしても,今回だけで外国バイヤーの方が国内バイヤーより,数が多くなったと言う。(国内40%、海外60%比率)
 
『勤勉性と器用性と見栄性』が生む見た目感
 しかし,冷静に考えてみると,この状況というのは案外,『日本的なる状況』と言えるかもしれない。従来からの『Made in Japan』には決して,モノの本質的な創造は無かった。そのオリジナリティは無いか貧しいにしても,その主題の取り方、素材の使い方の上手さと巧さで即ち,工芸的に使う事でオリジナルものより以上に装飾的に使いこなしてその結果、それそのモノを”オリジナル”としてしまうことが即ち『Made in Japan』であったはずだ。これは,オーバーな言い方をすると,『日本文化の本質』かもしれない。僕たちが使っている漢字に対しての仮名の関係も然り,磁器と陶器の関係,漢画と大和絵そして,琳派の関係等など。最近でのIT機器類にしても,ケイタイの本体の特許部分はサムソンが押さえていてそれらを使ってのアッセンブリッジが多種多様化されたものが上手、得意分野という事も考えれば、これが,元々の『日本人の作る』という事に対するオリジナリティ性と理解出来る。日本人らしさの『勤勉性と器用性と見栄性』が生む見た目感な「創造の世界」がこのモードの世界へもやっと,ここ60年をへて辿り着いたのかと考えられる。この日本的創造の世界の本質には『素材』へのこだわり観と,日本人の特質性である『器用性と見栄性』とその「見た目感」の関係性が日本的に存在するある種の法則を考えてしまえる。これらも,戦後からの『豊かさ』の発展,進化の結果がもたらした今後,日本人の若い世代に期待するべき所でもあろう。

そんな彼等たちはどのような構造でビジネスを行っているか?
 多く開催されているサロンへの出店が増えている。サロン数は大きなもので10サロンを超える。それらのサロンで、自分たちのテイストとレンジが合うところへモノと自分たちが行って出店する初期的な構造からスターとしているブランド。そして、ディストリビュターオフィスでの展示受注を行っているブランド。(多分、13%〜18%のセールスコミッションを取られてやっているはず)彼らたちに任せば、従来からの良い顧客を持っているのでそれらが自分たちの顧客になる想いをかけて任せる。これらは基本的にショーをやりその後の営業活動を現地のディストリビュターを外付けとしているブランド。

海外バイヤーたちにどのような受け取り方や格付けがなされているのか
商売中心に考えるとこれからもっと、可能性がある日本ブランドという感想。
メインのブランド商品ではないが置いておくと売れてしまうというサブ的なもの。
これは価格帯とデザイン性そして、デリバリーとそれなりのクオリティから。
ここでも、日本人らしさの善いところが認められてのバイニングであろう。
それに、追い風としての話題性ある「新素材と東京」。

彼らたちが世界のメインブティックのメインブランドになるためには
『サロン』出展から次は『ショー』へ。
その時にどれだけ、コストとリスクを掛けて、『明日』を指させられるクリエーションが発表出来るか?そして、それなりの世界レベルのジャーナリストたちに気に入ってもらえるか?
そして、やっと、念願の【パリ・コレ デザイナー】へ!! 今、一歩。

日本のファッションビジネスとブランドの利点と欠点
*素材が豊富。特に新・高品位繊維。
*まだ、国内生産に頼れる構造が残っている。
*出来上がりクオリティがよい。
*デリバリーがきちんとしている。
*市場が大きく、動く。
*メディアのホロがいい。
*消費者が成熟しはじめている。
*プライス面がこなれている。
*売れ線、トレンドものしか作らない。
*クリエーションにおける冒険はあまりやらない。
*ファッション教育構造が特化している。
*ONE POINT DESIGNが出来る。即ち、売れるコツをデザイン出来る。
*手先の器用さでSPECIALが出来る。
*コーディネートファッションは上手。

今後の課題は将来性を指差すこと
総体に売れるものをきちんと作る事がうまく、それ以上の冒険、可能性そして、独自性を打ち出しているブランドはまだ少ない。
トータルで、結果、スペシャル性又は、アヴァンギャルド性又は、クラフト性のそれぞれの高品位性を目指すこと。そして、服の後ろに【文化】が見えるものまたは、【美意識】が感じられるものに挑戦してくれる心意気とレベルが欲しい。これが無ければ、世界レベルのファッション・ジャーナリストたちを驚かす事は出来ない。

肩を並べる外国人デザイナーたちは彼等たちをどのような眼差しで見ているか
ここまで来るブランドであるからそれなりの資金的な現実が先ず、外国人若手より有るのでそれにジェラシーを感じる。それと生産構造が身じかでしっかりしたところが残っていると言う現実は実際に商品を作ること自体が難しい彼らたちにはとっても羨ましいこと。

結論としては、現在のNew-Generationsたちは完全に『CONSUMING-DECADENCE』の落とし子たちである。従って、ファッションを売る事、売りたいという事には早熟でありこの15年程でかなり成熟した日本ブランド。特に、男物はかなり、世界に通じる事が可能。そのサンプリングに『裏原』系が有る。それと、劇画、TVゲームからのイメージングソースは今や世界規模で共通のコンテンツになっているので女物のテイストやモード観の違いがまだ存在する世界よりはやり易い。
それとこの10年間程で、この世界も海外留学生が増え、彼らたちが帰国後やはり、海外を目指し始めた。それによっての語学力の進化も大きな要因。世界マナーを身につけ始めたとも言える。
弱点は、ビジネス構造としてのスタッフ人材に弱い。これからは彼らたち、世界に通用するファッションビジネスマンの養成と教育する事が課題である。
ある意味で中途半端な作り手志向よりも今は、ビジネス力を持つ事が鍵。
どんなものをどんな人が買うかが解らないまま進出しているブランドさえ有る。
現在のままで往くと、あの1987年の『原宿コレクション』参加ブランドがいつの間にかその後、『DC]ブランドという名称をマスコミから貰って創造性豊かなデザイナーブランドの横に並んでしまった状況の巴里版を思ってしまう。
そして、最後に、国内における『ファッションジャーナリズム』を気骨在るものへ成熟させることも大切な作り手への知的ホロが必要。

 彼らたちのルーツ的、キーワード:オタク=STUDENT CONSUMERS=販売バイト/フリーター=オリジナルものと称したコピーもの=T-SHIRTS、靴、帽子、アクセサリー、皮小物、シルバージュエリィーそして=トータルブランド展開へ=『夢』としての海外進出。

 このような、日本人デザイナーたちにとっては『追い風』が吹いています。
この風を上手く利用して『風力発電所』的構造と機能を世界へ、アジアへ向けて気概豊かに、参加ブランド企業も公的機関もそして役人たちも揃って、現実を直視して新たなモードの可能性へビジネス戦略を構築して行って欲しいものである。 
/文責;平川武治/昨夏執筆文:

投稿者 : take.Hirakawa | 2008年03月11日 05:11 | comment and transrate this entry (0)

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