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新版「The ARCHIVES Le Pli」/この”平川武治のノート-ブログ”に新たに、今までの掲載分から選択したアーカイブ集を始めました。「The ARCHIVES Le Pli」03 S/S パリ・コレ 平川版

 新版「The ARCHIVES Le Pli」/
この”平川武治のノート-ブログ”に新たに、今までの掲載分から選択したアーカイブ集です。 
 
 今回も、日記風に書く。
 新版「The ARCHIVES Le Pli」-02:
「03 S/S パリ・コレ ひらかわ版;」
 この”平川武治のノート-ブログ”に新たに、今までの掲載分から選択したアーカイブ集を
始めました。

初稿/2002-10-28

 21th.OCT.02/
  アントワープで「incubation gallery DISCIPLINE-JAP」をオープン;
 コレクションが始まる前の9月の半ば過ぎ、2週間ほどはアントワープ。
9月21日にこの街に新たに完成した「モード美術館」のオープニングに合わせて、
僕も「incubation gallery DISCIPLINE-JAP」をオープンさせ、レセプッションを開き多くの友人
たちが、巴里からのWWDのロバート夫妻、モード美術館の館長に就任したリンダ・ロッパと巴里
のI.F.M.のチーフファッション・ヂィレクターのフランシーヌ、マガジン・Cの編集長ゲルデイー
を始めアカデミーの先生や生徒たちとU.A.の栗野さんやバイヤーそれにウオルターたちも。
いっぱいの人たちが、集まってくださってオープニングが出来た。このギャラリーは名前の通り
ファッションを学んだ元学生たちが実社会へ出てゆくために役立てて欲しいと言う思いでの
スペース。展示会や展覧会それに彼らたちのプレゼンテーションに使ってくれればという発想の
ギャラリィ。今このコンセプト・ドシエを製作中。御楽しみに。

 JACOB S.社の100年展の企画。; 
 その後、チューリッヒへ行き10年来のこの街の友人たちと2004年にチューリッヒ
ナショナル美術館でオートクチュール素材の企画展を行うための打ち合わせ。
これは僕も大変に勉強になる仕事。
 チューリッヒの郊外約80K.の所にザンクト・ガレンと言う織物の町がある。
ここに古くから、100年を越えて受け継がれ、今も盛んに美しい、良い素材を作っている
クチュール素材専門の素材メーカー、JACOB S.社のための企画展。この”ザンクト・ガレン”は、
8世紀には既に、麻、亜麻織物産業が始まり、18世紀には綿工業が主流になり、19世紀からは
精緻な刺繍やレースの産地として広く知られる町。
 JACOB S.社はパリのクチュールメゾンの御用達素材メーカーで、最近では、スワロスキーの
クリスタルをシルク地に打ち込む技術開発によってより、需要が広がった。
ここのチーフディレクターマーティンが、ロンドンのセント・ マーティン校で教鞭をとっている
ことから、日本人のインターン生も嘗て、はいたと言うところ。
 そして、今回は組む人たちがみんなプロなので楽しみ。

 コレクションが始まる。;
 そして、アントワープ経由で再び、巴里。
僕が始めてこの街へコレクションを見るために来たのが‘85年。それ以来、一度も欠かさずに
コレクション詣での状況が続く。
 そんな僕が今、振り返って思うことは‘93年ぐらいまでは僕も好奇心旺盛に情熱を持って見て
いたが、それ以降は少しずつ惰性的になって来ていると感じる。
 「モードは退化し、服が進化し始めた。」と提言したのが丁度、この時期。
世界情勢が変わり、社会も変化し、生活の価値観が変貌し始め、女性たちの生き方も、身体つき
までもが進化したためであろうか、モードが新たなシーンを迎えたようだ。

 モードに再び、夢を求め始めた、今シーズンのパリコレ、#1;
 マルタン・マルジェラの一件でその前月迄を賑わしていたパリのジャーナリストたちもこの
時期が来るとモデムと会場にその神経が集中する。
 近年来、ここパリコレもトレンドだけを捜すためにであれば初日から2,3日で既に、読めて
しまう程の現状になってしまった。
 先ず、総括的な今シーズンのモードの状況とそこから生まれたトレンドを紹介しよう。
いつも良く聞かれる質問「トレンドは誰が作るのですか?」の答えは今シーズンを見ても解る。
それはデザイナーではなく勿論、素材メーカーである。素材メーカーが1年先のコレクションの
基礎となる”トレンド・フレーム”を発案し、プルミエール・ビジョン(パリで催される合同素材
展)でプレゼンテーションを行う。これが一年先のトレンドの”基礎フレーム”である。
そして、現在ではその殆ど、何らかの形でビジネスが継続しているプレタポルテ・デザイナーたち
はこのプルミエール・ビジョンへ出掛ける。
 悪く云ってしまえば、「ワラをもすがる」ために、いわば、第一のビジネスの安全パイを手に
入れるためにこの素材展”プルミエール・ビジョン”へ出掛ける。多分、最近の傾向を見ていると
この安全パイを先ず入手するデザイナーは以前より増えたことでコレクション初期に既に、
「トレンド」が読めるようになった原因であろう。若いデザイナーも、売る事を意識し始めたと
も読める。
 従って、大半のファッション・デザイナーは”トレンド”を文字通りデザインするだけだ。
この時に、「自分の世界観」で”トレンド”をどのように、”デザインするか”がそのデザイナーや
ブランドのアイデンティティとなる。素材メーカーが与えたトレンドフレームの中で彼らたちは
素材を選び、テーマ性を考え、インスピレーションを探し求め、自分たちの世界観をどのような
イメージでショーイングするかに掛ける。これが「コレクションを創る」と言うことである。
 最近の若手デザイナーたちのその多くが「ネタ」を過去のデザイナーの作品やモノからサンプ
リングしリメイクして”時代の気分”を自分の美意識の中で一つの世界観を創造する作業そのもの
が、『未来への閉塞感』、『未来への不安感』が時代観になってしまい、過去のノスタルジーへ
その拠りどころを求め出したのがここ数年来のモードの現実である。
 即ち「時間がスローになり」結果、「明日を想うために、昨日を探す。」ことがでザインする
手法になりつつある。

 そこで、今シーズンから僕は新たなデザイナーのカテゴリーを考えた。;
 従来は、【ファッション・クリエーター】【ファッション・デザイナー】だった世界に、
‘91年のトム・フォードの登場と共に、【ファッション・デイレクター】がこのモードの現実に
新たなデザイナー・カテゴリーとして登場し、この約10年間が賑わった。
 しかし、21世紀のファッションデザイナーのカテゴリーとして、僕は【ファッション・D.J.】
を加えたい。
 ここでこれらのファッション・カテゴリーを少し、説明しておこう。
 【ファッション・クリエーター】とは時代をクリエートする事とモードをクリエートする事が
自らのアイデンティティとコンセプトによって、同じクオリチィー・レベルと感覚と美意識で
時代と服をクリエーションして来たデザイナーたちだ。A.アライア、J.P.ゴルチェ、川久保玲、
M.マルジェラ、J.ワタナベ、H.チャラヤン、B.ウィリヘルム等がさし当たって思い出せる。
 【ファッション・デザイナー】これは先程にも書いた”トレンドをデザインするデザイナー”で
ある。プレタポルテの世界は大半がこれである。
 【ファッション・デレクター】とは”ファッション・ビジネスのMD”をイメージングするのが
上手く、巧みなデザイナー。勿論、彼らは服のデザインだけではなくもっと、トータルに、
ファッション・ビジネスそのものをイメージ・デレクション出来る新たな人種とでも言えるだろう。
 【ファッション・DJ】MTVジェネレーションたちのモードへの参加現象で誕生した。
これは今シーズンのアンダーカヴァーやラフ シモンズが代表であろう。そのネタは”ザッピング”
によって他のデザイナーのものから”サンプリング”してそれらを今の時代の気分にヴィジュアル
的に上手にまとめ上げる連中の事である。当然、彼らたちには”オリジナル”は必要なく
”オリジナル”に対する貞操観念は皆無である。自分たちが今の時代でカッコいいと思ったものを
サンプリング或は、パックっての”ヴィジュアルゴッコ”。これは彼ら、ファッション・フェロー
たち、ニューゼネレーションの新たなファッションデザインの領域でもあろう。彼らたちの
クリエイティブキーワードは≪ザッピング≫≪サンプリング≫≪ヴィジュアル≫≪カッコ良さ≫即ち、
ミュージュックD.J.のファッション版でしかない。「ストリート+ミュージック+ファッション」
がクールの根幹だと言う世代。
 これは現在の日本では他国よりも環境が発達している。その為に、このタイプのデザイナーが
殆んどが、日本の状況である。メヂィアがモノ情報のカタログ化状態であるため≪サンプリング≫
のネタが多いというだけである。そして、≪大きな物語よりも小さなデチィールのサンプリングに
よるヴィジュアル化≫現象、これは≪ポストモダン≫社会の超・消費化現象の一つでもあろう。

 新らたな見事なまでのモード・マジシャンが居なくなり始めた。;
 そして、これらのモードにおける構造変化の要因は90年代始まりの、「モードは退化し、服が
進化し始めた。」頃より、本質的なモード・クリエーションの領域が不明確になって来た事。
もう、殆んど、新たな見事なまでのモード・マジシャンが居なくなり始めた事と勿論、その結果
と影響によって、ファッション・デイレクター、トム君が登場し、ビジネスライクのデザイナー
・メゾンの多くがこぞって、このトラックに並び始め、参加した事。
 もう一つは、‘90年も半ば過ぎより安定してきたこれら、「ファッションのマック化」現象の
即ち、ファッション産業のグローバリゼーション化の結果とその反動としての【ファッション・
D.J.】の登場である。
 その為、現実のプレタポルテデザイナーの実状はこの二つの大きな「ファッション・ビック・
マック」に挟まれてしまった。一つはラグジュアリーのファッション・ビック・マックと
もう一つはSPA型のビック・マックに!
 この結果、従来までのインデペンデントなクリエイティビティー豊かなデザイナーたちが
生産面とビジネス面でメインストリームを独立独歩、歩むことが至難化した。
”マック”には「笑顔とスピードと安価」というサービスがある。しかし、そのテイストは割一
で、クオリチィーは???である。
 彼らたち、ラグジュアリィーブランドの笑顔とサービスは膨大な予算でメディアを操る
イメージ広告と店頭MD力である。彼らたちメゾンは、「裸の王様」よろしく、誰を味方に付け、
成金たちや大衆を先導させればよいかを、モードよりも立場やお金の好きなファッション・
ビクティム・ジャーナリストたちを煽っている。
 
 総括的、幾つかの”キーワード”と”トレンド”とは、;
 この様なモードのランドスケープをバックに今シーズンもやはり、トレンドは生地屋が発振し
デザイナーがそれを受けてトレンドをデザインしたコレクション・シーズン。
 先ず、クリエーションコンセプトは「分量/ボリュームのデザイン」である。
そこで、クリエーティブ・コンセプトは分量からの発想で、「サークル/円」そして、
「ジオメトリー」。素材メーカーは喜ぶ。しかし、このコンセプトも早いデザイナーからすれば
既に、5シーズン目に至っているので旬は越したと云える。よって、”テーマ性やイメージ
コンセプト”がもう一方の重要なコレクション軸となる。同じ素材も理屈を別の目線で作れば、
違って感じる、見える。と言う戦法である。
 
 昨年の11th.Sep.以降より、未来が見え難くなり、経済や社会の不安定さ、不確実さと
YSローランの引退後のモードは『モードとポエジー』という新たなポジティフなテーマ性も
考慮始める。
 これらのテーマは「太陽の新しい輝き、光」と「新しく、爽やかな風」そして、
「ファッションに夢、再び」をいくつかのトレンド・テーマの中で謳歌した。
これらの時代性、社会性をくみ取った幾つかのトレンドテーマの一つは『新・ロマンティズム』
素材は綿中心に、ジャージ、カットソー、麻、サテン、シャンブレー、そしてシフォン等など。
プリントは多くが「小花」プリントの謳歌。インテリアファブリックやウォール・ペーパーも
魅力。
 解り易く、ミラノでも主役を勤めたテーマが『セクシー』。
女性の身体つきのパーツをバランスよく、美しくセクシーに新鮮に見せる。着た女性が輝き、夢
再び!というコンセプト。
素材はレーヨン、トリコ、ジョーゼットなどと輝きのあるラメ、スパンコール、シルバーと
ゴールドもの。それに、下着素材が中心とデュポン社のストレッチ素材のダイクラも。
 実際には、このテーマによって、”ミニ・スカート”の再登場や次のコレクションへ影響を
与えるであろう『ソフト・ボンテージ』もちらりと登場。
 「ニュースがモード」のコンセプトは「北アフリカンテイストのエスニック」。
素材は綿、麻、洗いざらしと染め。そして、クラフトな温もり感がポイント。
ここでも花プリント。バックやベルト、アクセサリー類にこのテイストはビーズやスパンコールの
刺繍と共にプリミチィフな施しでより、人間味ある感覚として多く表れた。
 これらのトレンドテーマと「分量豊かなバランス化」というクリエーションコンセプトを
つなぐディテールとして「結ぶ」「しめる」「巻き付ける」「たぐしあげる」と言う機能が多く
登場。その為に「パンキッシュ」も一つの香辛料となった。
 そして、デイテール使いにラメやスパンコールの光り物と、風になびくひもやリボンが多く
表れたのも珍しくはなくなったが”新しい輝き”のためであろうか?

 「どんなデザイナーが良かったかと?」;
 シーズンが終わった今、フランス人ジャーナリストたちから、「どんなデザイナーが良かった
かと?」これも良く聞かれる質問であるが、
 今シーズンで、最もクリエイテイヴィテイあるエキサイテイングデザイナーはH.チャラヤン。
最も美しいショーを行ったのはJ.ワタナベ。最も良いコレクションを行った新人デザイナーは
H.アッカーマン。ワーストコレクションはジバンシー。
 今シーズンで格が下がったデザイナーはV.&ロルフ。若返りが成功したブランドはモンタナを
はじめたS.パルマンティエ。反対に、若返りに失敗したのがR.フェローのJ.P.ノット。
 来シーズンに影響を与えるであろうコレクションを発表したのがM.シットボン。
自らの”ルーツ帰り”でクリアーなコレクションを発表したのが僕の好きな、J.コロナ。
それに、ショーはしなかったがコレクションとしては充実し、彼の個性が溢れ出ていたのが
B.ウイリヘルム。彼のコレクションにはいつも、多くの次回のコレクションのアイヂィアが
溢れている。
 次回は個々のデザイナー・コレクションについて。
ありがとう。T**E.

投稿者 : take.Hirakawa | 2002年10月28日 09:11