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03 S/S パリ・コレ 平川版

21th.OCT.02;
 コレクションが始まる前の9月の半ば過ぎ、2週間ほどはアントワープ。9月21日にこの街に新たに完成した[モード美術館]のオープニングに合わせて、僕も「incubation gallery DISCIPLINE-JAP」をオープンさせ、レセプッションを開き多くの友人たちが、巴里からのWWDのロバート夫妻、モード美術館の館長に就任したリンダ・ロッパと巴里のI.F.M.のチーフファッション・ヂィレクターのフランシーヌ、マガジン・Cの編集長ゲルデイーを始めアカデミーの先生や生徒たちとU.A.の栗野さんやバイヤーそれにウオルターたちも。いっぱいの人たちが、集まってくださってオープニングが出来た。このギャラリーは名前の通り、ファッションを学んだ元学生たちが実社会へ出てゆくために役立てて欲しいと言う思いでのスペース。展示会や展覧会それに彼らたちのプレゼンテーションに使ってくれればというコンセプト。       今このコンセプト・ドシエを製作中。御楽しみに。

 その後、チューリッヒへ行き10年来のこの街の友人たちと2004年にナショナル美術館でオートクチュール素材の企画展を行うための打ち合わせ。これは僕も大変に勉強になる仕事。チューリッヒの郊外約80K.の所に古くから、100年を越えて受け継がれ、今も盛んに美しい、良い素材を作っている素材メーカーのための企画展。組む人たちがみんなプロなので楽しみ。

【コレクションが始まる。】
 そして、アントワープ経由で再び、巴里。
僕が始めてこの街へコレクションを見るために来たのが‘85年。それ以来、一度も欠かさずにコレクション詣での状況が続く。
今、振り返って思うことは‘93年ぐらいまでは僕も好奇心旺盛に情熱を持って見ていたが、それ以降は少しずつ惰性的になって来ていると感じる。「モードは退化し、服が進化し始めた。」と提言したのが丁度、この時期。世界情勢いが変わり、社会も変化し、女性たちの生き方も、身体つきまでもが進化したためであろうか、モードが新たなシーンを迎えたからであろう。

[モードに再び、夢を求め始めた、今シーズンのパリコレ。] #1
 マルタン・マルジェラの一件でその前月迄を賑わしていたパリのジャーナリストたちもこの時期が来るとモデムと会場にその神経が集中する。
 近年来、ここパリコレもトレンドだけを捜すためにであれば初日から2,3日で既に読めてしまう程の現状になってしまった。
 先ず、総括的な今シーズンのモードの状況とそこから生まれたトレンドを紹介しよう。
 いつも良く聞かれる質問「トレンドは誰が作るのですか?」の答えは今シーズンを見ても解る。それはデザイナーではなく勿論、素材メーカーである。
 素材メーカーが基礎となるトレンド・フレームを発案し、プルミエール・ビジョン(パリで催される合同素材展)でプレゼンテーションを行う。これが一年先のトレンドの基礎フレームである。そして、現在ではその殆ど何らかの形でビジネスが進展しているプレタポルテ・デザイナーたちは、このプルミエール・ビジョンへ出掛ける。悪く云ってしまえば、「ワラをもすがる」ために、いわば、第一のビジネスの安全パイを手に入れるために出掛ける。多分、最近の傾向を見ているとこの安全パイを先ず入手するデザイナーが以前より増えたことでコレクション初期に既に「トレンド」が読めるようになった原因であろう。
 大半のファッション・デザイナーはトレンドを文字通りデザインするだけだ。
素材メーカーが与えたトレンドフレームの中で彼らたちは素材を選び、テーマ性を考え、インスピレーションを探し、自分たちの世界観をどのようなイメージでショーイングするかに掛ける。最近の若手デザイナーたちのその多くが「ネタ」を過去のデザイナーの作品やモノからサンプリングしリメイクして時代の気分を自分の美意識の中で一つの世界観にまで造ることがコレクションという『未来への閉塞感』、『未来への不安感』が時代性になってしまい、過去の『ノスタルジー、メモリー』へその拠りどころを求め出したのがここ7年来のモードの現実である。

 そこで、今シーズンから僕は新たなデザイナーのカテゴリーを考えた。
従来は、【ファッション・クリエーター】【ファッション・デザイナー】そして、‘91年のトム・フォードの登場と共に、【ファッション・デイレクター】がこのモードの現実に新たなデザイナー・カテゴリーとして登場。
しかし、21世紀のファッションデザイナーのカテゴリーとして、【ファッション・D.J.】を加えたい。

ここでこれらのファッション・カテゴリーを少し、説明しておこう。
【ファッション・クリエーター】とは時代をクリエートする事とモードをクリエートする事が自らのアイデンチィチィとコンセプトによって、同じクオリチィー・レベルと感覚と美意識で時代と服をクリエーションして来たデザイナー。A.アライア、J.P.ゴルチェ、川久保玲、M.マルジェラ、J.ワタナベ、H.チャラヤン、B.ウィリヘルム等がさし当たって思い出せる。
【ファッション・デザイナー】これは先程にも書いた[トレンドをデザインするデザイナー]である。大半がこれである。
【ファッション・デレクター】とは[ファッション・ビジネスのMD]をイメージングするのが上手く巧みなデザイナー。勿論、彼らは服のデザインだけではなくもっと、トータルに、ファッション・ビジネスそのものをイメージ・デレクション出来る新たな人種とでも言えるだろう。
【ファッション・DJ】MTVジェネレーションたちのモードへの参加現象。これは今シーズンのアンダーカヴァーが代表であろう。そのネタは[ザッピング]によって他のデザイナーのものから[サンプリング]してそれらを今の時代観、気分にヴィジュアル的に上手にまとめ上げる連中の事である。当然、彼らたちには[オリジナル]は必要なく[オリジナル]に対する貞操観念は皆無である。自分たちが今の時代でカッコいいと思ったものをサンプリング、即ち、パックっての[ヴィジュアルゴッコ]。これは彼ら、ファッション・フェローたち、ニューゼネレーションの新たなファッションデザインの領域でもあろう。キーワードは≪ザッピング≫≪サンプリング≫≪ヴィジュアル≫≪カッコ良さ≫即ち、ミュージュックD.J.のファッション版でしかない。これは現在の日本では他国よりも環境が発達している。その為に、このタイプのデザイナーが殆んどが、日本の状況である。メヂィアがモノ情報のカタログ化状態であるため、≪サンプリング≫のネタが多いというだけである。≪大きな物語よりも小さなデチィールのサンプリングによるヴィジュアル化≫現象、これは≪ポストモダン≫社会の超・消費化現象であろう。

そして、これらのモードにおける構造変化の要因は90年代始まりの、[モードは退化し、服が進化し始めた。]頃より、本質的な[モードのクリエーション]が不明確になって来た事。もう、殆んど、新たな見事なまでのモード・マジシャンが居なくなり始めた事と、勿論、その結果と影響によって、ファッション・デイレクター、トム君が登場し、ビジネスライクのデザイナー・メゾンの多くがこぞって、このトラックに並び始め、参加した事。‘90年も半ば過ぎより安定してきたこれら、「ファッションのマック化」現象の即ち、ファッション産業のグローバリゼーションの結果とその反動としての【ファッション・D.J.】の登場である。

その為、現実のプレタポルテデザイナーの実状はこの二つの大きな「ファッション・ビック・マック」に挟まれてしまった。一つはラグジュアリーのファッション・ビック・マックともう一つはSPA型のビック・マックに。
この結果、従来までのインデペンデントなクリエイティビティー豊かなデザイナーたちが生産面とビジネス面でメインストリームを独立独歩、歩むことが至難化した。マックには笑顔とスピードと安価というサービスがある。しかし、テイストは割一で、クオリチィーは???である。
彼らたちの笑顔とサービスは膨大な予算でメディアを操るイメージ広告と店頭MD力である。
「裸の王様」よろしく、誰を味方に付け、成金たちや大衆を先導させればよいかを、モードよりも立場やお金の好きなファッション・ビクティム・ジャーナリストたちを選ぶ。
 
 この様なモードのランドスケープをバックに今シーズンもやはり、トレンドは生地屋が発振し、デザイナーがそれを受けてトレンドをデザインしたコレクション。
 
 先ず、クリエーションコンセプトは「分量/ボリュームのデザイン」。
クリエーティブ・コンセプトはそこからの発想での「サークル」「円」そして、「ジオメトリー」。素材メーカーは喜ぶ。しかし、このコンセプトも早いデザイナーからすれば既に5シーズン目に至っているので旬は越したと云える。そこでテーマ性やイメージコンセプトが重要なもう一方のコレクション軸となる。
 
 昨年の11th.Sep.以降、より、未来が見え難くなり、経済や社会の不安定さ、不確実さとYSローランの引退後のモードのリ・アクション化は『モードとポリチィック』という新たなテーマ性をも考慮しながら、時代性を反映したこれらのテーマは「太陽の新しい輝き、光」と「新しく、爽やかな風」そして、「ファッションに夢、再び」をいくつかのトレンドテーマの中で謳歌した。
 これらの時代性、社会性をくみ取ったコレクションテーマの中での幾つかのトレンドテーマの一つは『新・ロマンティズム』。新しい時代観にあったロマンティズムは生活に於けるプリミティブな遊びとしての機能性をも付加したもの。
素材は綿中心に、ジャージ、カットソー、麻、サテン、シャンブレー、そしてシフォン等など。
プリントは多くの「小花」プリントが謳歌。インテリアファブリック、ウオール・ペパーも魅力。
 解り易く、ミラノでも主役を勤めたテーマが『セクシー』。
女性の身体つきのパーツをバランスよく、美しくセクシーに新鮮に見せる。着た女性が輝き、夢、再び!というコンセプト。素材はレーヨン、トリコ、ジョーゼットなどと輝きのあるラメ、スパンコール、シルバーとゴールドもの。それに、下着素材が中心とヂュポン社のストレッチ素材のダイクラ。
このテーマによって、ミニ・スカートの再登場や次のコレクションへ影響を与えるであろう『ソフト・ボンテージ』も登場。
 「ニュースがモード」のコンセプトは「北アフリカンテイストのエスニック」。素材は綿、麻、洗いざらしと染め。そして、クラフトな温もり感がポイント。ここでも花プリント。バックやベルト、アクセサリー類にこのテイストはビーズやスパンコールの刺繍と共にプリミチィフな施しでより、人間味ある感覚として多く表れた。
これらのトレンドテーマと「分量豊かなバランス化」というクリエーションコンセプトをつなぐディテールとして「結ぶ」「しめる」「巻き付ける」「たぐしあげる」と言う機能が多く登場。その為に「パンキッシュ」も一つの香辛料となった。そして、デイテール使いにラメやスパンコールの光り物と風になびくひもやリボンが多く表れたのも珍しくはなくなったが[新しい輝き]のためであろうか?

シーズンが終わった今、フランス人ジャーナリストたちから、どんなデザイナーが良かったかと?
これも良く聞かれる質問であるが、今シーズンでの最もクリエイテイヴィテイあるエキサイテイングデザイナーはH.チャラヤン。最も美しいショーを行ったのはJ.ワタナベ。もっとも良いコレクションを行った新人デザイナーはH.アッカーマン。ワーストコレクションはジヴァンシー。今シーズンで格が下がったデザイナーはV.&ロルフ。若返りが成功したブランドはモンタナをはじめたS.パルマンチェ。
反対に、若返りに失敗したのがR.フェローのJ.P.ノット。来シーズンに影響を与えるであろうコレクションを発表したのがM.シットボン。自らの【ルーツ帰り】でクリアーなコレクションを発表したのが僕の好きな、J.コロナ。それに、ショーはしなかったがコレクションとしては充実し、彼の個性が溢れ出ていたのがB.ウイリヘルム。彼のコレクションにはいつも、多くの次回のコレクションのアイヂィアが溢れている。
 次回は個々のデザイナー・コレクションについて。
ありがとう。T**E.

投稿者 : take.Hirakawa | 2002年10月28日 09:11