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モードから読む『表と裏』−6;若手プレタポルテデザイナーの立ち居場所。

 コレクションも終わり時間が経った。
なので再度、考え現在のプレタポルテデザイナーの若手と称されるデザイナーたちとは
どの様なデザイナーが、どの様な仕事をしているかを改めて考えてみよう。
ここにも『表と裏』の世界になるのだろうか?
ラグジュアリー系の広告費を出している企業デザイナーたちが表層の”表”であれば、
自分の好きな世界観と実力で自分なりのコレクションをやる事で精一杯である
若手と称されるデザイナーたちのコレクション。
ここから、何人のデザイナーがそれなりの”サクセスストーリィー”を歩むことが
出来るのであろうか?
若手デザイナーたちは余りメディアに乗らなく、情報されないデザイナーたちであり、
彼らたちの認知度も低いのが現実であろう。
パリ-コレクションとその周辺;
 僕のように自分のファッション観を眼差しとしてインデペンデントに30年間、
このパリコレを見続けて来た者にとっては、最近ではコレクションカレンダーの初日と
その次の2日間が一番面白く見れる。後半になるとラグジュアリィー系と巴里のサンチェ系の
所謂、金銭的に余裕のあるメゾンと老舗メゾンがカレンダーを競いあう。
特に、ラグジュアリー系は週末に行なうのが多い。これは一般顧客を招待するからである。
又、愉しい事では、学校が休日であれば多くのシングルマザージャーナリストたちは
子供を連れて来る。
 日本のファッション誌関係者たちは大切な広告主との関係で純広をもらっているメゾンには
必ず顔を出さなければならない。
しかも、その広告ペイジ数によって編集者たちの観戦人数が決められる、という現実的な
世界でもある。又、それがお友達メゾンであればそのメゾンの今期モノを着て行かなければ
そのプレス担当者に気に入ってもらえなくなる事もある。
現実の”パリ-コレ”も此の様なシビアーな”広告世界”に成ってしまったのも2000年以降の
現実である。
 ファッションの世界自体が変貌した。一つは”ファッションクリエーションの世界”
もう一つはそれらを取り巻く”メディアの世界”の双方からで在る。
その結果が、『The fashion is not art, fashion is even culture,the fashion is an advertising.』
という迄のAnna Winter嬢の先見ある発言が現実に成ってしまった。
 僕は見始めた’85年来、変らず”フリーランス”という立ち居場所でチケットを請求し、
見せて頂いている。が、最近では僕も確りしたメディアとの契約が少なくなって来た為に
頂けるチケットも少なくなって来た。グローバリズム以降先ず、”ブロガー”と
”ファッションサイト”が登場した。最初の頃は各メゾンも警戒していたが今では諸手をあげて
インビテを出している。もう一方では、この4年来、完全に日本人は居心地の狭い境遇に
立たされ始めた。それは、中国組の進出である。メゾン側も日本よりもビジネスの可能性と
将来性を読んで全く、日本人には冷遇し始めた。会場のキャパシティは限られている。
従って、今迄入れていた人たちとの組み替えが当然のように行なわれる。
フロントローは勿論、中列も、立ち見も入れ替えが為されている。従って、僕のような立場は
先ず最初にこの入れ替え作業に引っ掛かる。現実、これで見れなくなり始めるメゾンは増えて
来る。しかし、そこは”30年来”というキャリアに助けられている。
見たいメゾンの殆どのプレスの人たちと関係性が功を奏しているのが事実上である。
現地メゾンとの間で日本のプレスエージェントが存在し始めたのも2000年来の事であるから
僕の方が遥かに沢山の人たちを知っていて助けてくださっている。ありがたい事である。
 初めから僕は『良いクリエーションは良いビジネスを生む。』という視点で見続けて来て
いるから若いデザイナーたちの動向には熟知している。その結果、いろいろなファッション校の
卒コレの審査委員をさせて頂いて来た。これも、助かっている。
今ではメジャーメゾンのデザイナーになっている人も出始めた。このような状況での
”パリコレを楽しむ方法”はやはり、若いデザイナーたちがカレンダーの初日や二日目に
まとめられるこの日を見るのが一番面白い。なぜ、彼らたちが初日かと言えば、
殆どの雑誌関係者たちはギリギリ迄ある”ミラノコレクション”へ気が行っているからだ。
ミラノが終わって巴里へのラッシュが大変である。よって、組合は彼らたちの為に最近では
若い面白いコレクションをやるデザイナーを初日と2日目にまとめているのだ。
解りやすく言ってしまえば、『広告代理店+メゾン』というビジネス関係が未だ、未完成なる
メゾンがこの2日間ほどにまとめられていると言った方がいい。
 僕なぞは、見慣れてしまっているから、この2日間でもうそのシーズンのトレンドは
読めてしまえる。従って、若手のデザイナーが感じ、発表したショーがその後、
企業デザイナーたちやラグジュアリィー系がどのようにこなすか?進化させているかを
読むのも面白い。 
 現在のパリ-コレ参加デザイナーたちのジャンル分けとは、
クチュール系メゾン+ラグジュアリィー系メゾン+サンチェ系メゾン(日本で言えば、
アパレル系)+インデペンデントメゾンそれに、政府関係による招待メゾンという分類が
出来る。シーズンごとに今では、インデペンデント系の数が減って来ているのが現実である。
それと、日本人デザイナーの数も減って来て、代わりに中国人デザイナーが増えている。
例えば、これはランウエーに出るマヌカンもそうである。それぞれのマヌカンの出身地への
ビジネスプレゼンテーションと考えてのキャスティングが行なわれるからである。従って、
今では日本人マヌカンは皆無であり、代わりにアジアンマヌカンは中国人マヌカンになった。
当然、フロントローの入れ替わりも今では中国人ジャーナリストたちとバイヤーたちが
優遇されてしまっている。
 という次第で、コレクション初日の若手プレタポルテデザイナーメゾンの幾つかについて
まとめよう。

若手デザイナーたちは;
 YANG LI/僕が今一番気に入っているデザイナー中国人26歳だと思った。
セントマを確か、中退。
 巧い。彼のバランス感覚はとてもセンスがいい。カッコいいショーをする。
最近の若いデザイナーではここ2シーズン、僕をとっても気にさせるデザイナーである。
今シーズンの彼は’90年代後半のアントワープデザイナーたちの造形を学習し、
そこに彼のセンスで、今何が一番新しいかを感知した所でのやはり、”日本素材”を
ブリ-コラージュした。個々のアイテムの素材の組み合わせ,色の組み合わせ,
分量の組み合わせ,後ろと前の重量感とそのバランス感,着丈のバランス感それに
素材が持っている質感のバランスのそれぞれが絶妙さがカッコいい。そして、
シルエットの作りも巧く、パターンメイキングも巧いという事である。
 このアントワープ+日本素材というアイディアは賢い。
そしてハイ-センスを感じさせるまでのバランス感で巧くまとめている。
 当時のアントワープのデザイナーたちが大いに使える素材とはウールのメルトンや
ギャバジンなどユダヤ人特有の素材でしかなかったからだ。
ここに、嘗ての”アーカイブ”をネタにしての”新たな素材”の組み合わせに”宝庫”が在る事を
今回のコレクションで見事に”センスと頭良く”見せてくれた、とってもすばらしくお利口さんで
バランス観も良い若いデザイナーが登場した。
 僕が発言している「これからのファッションクリエイティビティとは、
”THE VALIATION OF ARCHIVES”であり、今の音楽の世界と同じで、”カバー”の世界である。」
を実証した質の良いコレクションだった。
 彼がこなすメンズもメリハリが利いた所謂、ここでもアントワープ系をネタにレザーと
獣毛を巧くミックスしたダンディズムなメンズの世界もカッコ良かった。
 もう一つ、今回の彼のコレクションの裏側には、新たなバッカーが付くか、付きそうな
現実が在るらしい。この新たなバッカーとは既にC.ワイナンとA.F.バンデボルストを
バックアップしているアントワープの海運業で富を築いた資産家が投資し、元、V.Bのその後、
A.Dのセールスを経験したアントワープの女性を中心に造られたエージェントである。
このエージェントの次なる金の卵として、このYANG-LIを物色している。
 2000年初頭には、ロシアンマネーをコントロール出来るアントワープ出身の女性が
その夫から投資させてアントワープデザイナーたちのバッカーになった。A.D.,やH.A.それに、
ブリュッセルからのJ-P.L.たちが彼女からインベストされている。ハイダーが取り敢えず、
狭いフォーカスを度胸で派手なコレクションが継続出来るのはこのエージェントが在っての
彼の才能である。
 なぜ、日本からはこのような世界を舞台にする迄のインベスターが現れないのだろうか?
世界の”若手ファッションデザイナー”をインベストとしてバックアップする構造は現代日本では
成功していない。ただ、使い捨てする構造だけが残った状況。
ここには嘗て、全盛だった”商社”ビジネスの後遺症とご都合主義しか無いだろう。
現代日本でも、IT成金も多いという。彼らたちもファッション好きである。派手な世界、
派手な女たちも好きで有名人にも成れる。有名デザイナーであれば偽装倒産をした企業も
請け負ったIT企業も在るというのに。この世界にも、経済的余裕がなければB層も大好きな
”文化/カルチュアー”にも成り得ない世界が現実である。
 このままの現実が続く限り、世界におけるファッションデザイナービジネスでは企業、
”コムデギャルソン”を超える企業は出て来ないと断言する。今や、この企業は堂々の
”世界におけるファッション企業”である。(巴里におけるラグジュアリィーファッション企業の
ランキング/’10年調べに於いては13位にランクされていた。)
 JACQUEMUS/CdGの元販売員。
2シーズン目、”蒼空の元に浮かぶ雲”がイメージングか? ヤングマインドなコレクション。
若さが溢れている今回も愉しいコレクションを行なった。彼の若さと自由さをセンスよく
程よく自分の世界観で展開した又、これが出来るキャラクターを持っているデザイナーだ。
”不織布”をメイン素材に、ベルクロを使った自由な感覚で軽さの愉しさとカッコ良さを
爽やかな風が通り過ぎるようにランウエーを走った。
ビッグヴォリュム、フラットパターンを使って、僕が提案している“WITHOUT SEWING"+
"PARTS OF THE BODY"の世界観が伺えてうれしかった。メディア受けのいいデザイナー、
本人もカッコいい子。
 AGANOVICH/セントマ卒とその彼氏のスタイリストのドゥオブランド。
 巧く方向転換をし,プレスのディレクションが良かったのだろう、
フォーマルからの的を得たいいコレクションだった。
2シーズン目の”日本素材”のこなし方にも慣れ,自分たちのやりたい事と出来る事を
日本素材を使う事でより、新しく感じさせ,自分の世界観をトレンドの枠内で出していた
シーズン。バランスもボリュウム観を強調する。
そして、素材が持つ風合いを巧くデザインにしている。彼らたちは変らず、自分たちの
ファッション世界にどっぷり浸かっているナルシストなデザイナーだが、これでいいのだろう。
 今後の成長で少しづつ世間の風を感じるようになる。
その世間はポジティブでさわやかな風が吹いている事を体感すれば
もっといいコレクションが出来るだろう。
 CHRISTINE PHUNG/ ANDAM'13 年、ロレアル賞を受賞した新人。
 デビューコレクションなのだろうか?日本にもおなじみのCharlotte PERRIANDの言葉から
インスパイアされたコレクションは山岳スポーツアイテムによるスキースタイリング。
新しい事への挑戦こゝろがミックスアイテムやパンツのパーツ化などに感じられる。
雪の夜空がイメージでグラフィックに凝った。ビジネスが気になったのだろうか、丁寧な
造りだが未だこなれていない。今後の成長が愉しみ。このレベルは日本人の方が巧い?
 Corrie NIELSEN/彼女はロンドンからのデザイナー、
’10年に”ファッションフリンジ賞”を取ってスタートしたセントマ卒。
所謂、セントマタイプ、作り込みたいデザイナーである。分量観、バランス観は確りしている。
フラットパターン、ボリュームのあるロングコートは巧かった。珍しくショーの終わりに
マリアージュを出していた。彼女なりのトレンド消化型。僕は面白い新人らしさを感じたが。
 TEXSAVERIO/インドネシアからのゴールデンボーイ。
大使館文化交流による今回のコレクションだったのだろう。センスはいい。
僕がただ一つ気になったのはこのデザイナーが使った”ペーパーレース”の使い方であった。
必要な迄にこの自国の工芸性ある”ペーパーレース”を美しく見せる迄に使ったことだ。
 今シーズンも多くのデザイナーがインクジェットプリントに逃げる所を彼は自国の
“NATION IDENTITY"を軸にして、モダンにこれでもか、これでもかと使った。
この気分があの“L..GAGA"様も気に入って手を出したのだろう。
 所謂、“What's the Orientalism?"を理解している若いデザイナー。
 PASCAL MILLET/熟練デザイナーである。
その分いい所はしっかり、女性こゝろをくすぐる美しい服が作れる。
反面それが古いとも感じさせてしまうデザイナー。現在の立ち居場所でどのように”新しい風”を
感じそれを素直に造形出来ればすばらしいコレクションになるだろう。
しかし、今迄の延長レベルでまとめあげ過ぎては面白くない。レトロさを感じてしまうだけ。
 DEVASTEE/フェスティバルイエール出身。
V.B.S.がバックアップしようとしているフランス産ドゥオデザイナーブランド。
昨年その日本企業が彼らたちを初めて、東京へ招き青山墓地をうれしく楽しんだその後遺症が
今シーズンも。そして、その後ろで日本の消費社会の大きな森へ足を入れてしまったためか、
その世界で迷い始めてしまった、残念なデザイナーたち。
愉しい、フレンチ-エスプリが利いた”グラフィズム”が持ち味に成ってしまっただけの
コレクション。日本マーケットでどれ位行けるのだろうか?B.W.のお嬢さん晩を狙うのか?
JURIEN DAVID/東京在住フランス人デザイナー。
その成長が順調よく多くの周りの友人たちに支えられて今シーズンもいいコレクション。
色目てきに、”黒”を沢山使ったせいであろうか、以前よりも大人ぽいモードに感じられた
シーズン。素材は今シーズンも90パーセントは日本素材で日本生産。
この変らない信念と生産構造との関係性がいい。東京に住んでもう6年にはなるだろう。
その立ち居場所を最大限利用しての彼のコレクションは変らず、
”外国人が見た東京ストリート+α”が身上。トレンドである素材の分量感あるものの組み合わせ
もいい。刺繍、プリーツ、ストレッチ、表/後、分量感ある軽さ等など、トレンドを上手く
自分の世界観へ。
 UNDER COVER/今シーズンも巴里へ来た。
今年で20年目になるメゾン、それなりのファンがついているデザイナー。
 今シーズンは”東京デカダンス”あるいは”東京キッチュ”。コレクション。
インキジェットプリントで逃げてしまったがその逃げ足が大胆かつ繊細。
大盤振る舞いなスカーフコレクション。陶器のブルーチャイナからのグラフィックなど。
リボンをふんだんに思い切って使いましたコレクションだが、ガーメントには繊細な熟しが
施されていてもしかしたら、バイヤーたちが”売ってみたくなる”コレクションに
仕上がっているのだろう。がんばって続けて来てほしい数少ない日本人メゾン。
 Bernhard Willhelm/10年目の巴里を逃げ出しL.A.へ引っ越したメゾン。
ショーはやらなくなって久しい。
が、展示会の内容はこのデザイナーらしく”お遊びと驚き”がカッコ良くスマートに
デザインがなされたアイテムが多くやはり、バイヤーで在れば”売りたくなる”モノを彼らしく
デザインし出していたシーズン。プリントと刺繍のコンビ、大胆なパターンメイキングによる
ジャケット、コオト等々。パターンメイキングが上手いメゾンでもある。
このメゾンのデザイナー、ベルンハルトたちが愛するものは”自由”。そして”愛”。
これが継続されているコレクションは幸せである。
巴里はもう、不自由になった。と感じて昨年来メゾン毎L.A.へ移住してしまった心意気が
読めるコレクションだった。

 終わりに、若手デザイナーたちが、
 『”継続”を必須とするならば、いかに”自分流トレンド”によって自分の世界観を、美意識を
デザインして行くか?』
 これしか無いのが今の否、これからのモードのクリエイティビティと成功の関係性であろう。
世間のトレンドをどのように深読みし、あるいはパロディって自分の世界観へ落とし込めるか?
それにアイロニィーやユーモアまでもが造形出来るバランス観を持っているか?
この時にどのような”素材”と”素材感”をブリ-コラージュ出来るか?
その時にどれだけのスキルあるパターンメイキングが使えるか?
 ここに若手デザイナーの才能が懸かってくるのが現代と言うモードの時代性でもあろう。
文責/平川武治:

投稿者 : editor | 2014年4月28日 18:33 | comment and transrate this entry (0)

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