« デザイナー池田友彦の「Bemerkung/べメルクング」を読む。ー「解剖されたシャツ / Dissected shirt」或いは、「モードのマニエリスム」。 | メイン
『"ツモリ チサト"コレクション-「35年分の感謝」という名の"感覚のノスタルジア"に 好奇心が。』
1)プロローグ;「ふと、迷い込んだ"東京コレクション"からの好奇心。ー1」
『感覚のノスタルジア』という言葉が好きである。
これは僕がリスペクトしている哲学者であった、森有正が発した言葉だ。
偶然の機会によって9月4日、"ツモリチサト"の「35年分の感謝」がテーマだった
コレクションを見る機会を得た。
そして、彼女のデ フィレを観て想い出したのがこの『感覚のノスタルジア』だった。
『なぜなら,感覚は自分から発しながら,自分を超える唯一のもの
だからである。』と森有正は感覚そのものに委ねている。
既に、7年程が経ってしまったのだろう。
彼女、ツモリさんのコレクションがパリで観れなくなってしまってからはすっかり、
ご無沙汰をしてしまっていた。
彼女は患った大病から回復されて2年目、今回の35周年記念と銘打って行われた
コレクションはやはり、彼女の実力とキャリアと感覚の軽妙さを十分見せ、味わうことが出来た。
とてもポジティフなコレクションでした。
2)『地球を思い、自然と戯れ、それらのオマージュとしての花や植物と貝やヒトデ、
タツノオトシゴなどとネコのモチーフやドローイングを散らばせた"ツモリ・ワールド"。』
ツモリさんの7年ぶりのコレクションには世界を歩んだ自信と優しさが時代の雰囲気である
「ロマンティックとファンタジー」が程よい大人ごゝろを掴むまでの彼女の世界観に仕立て
上げられた"一皮剥けた"素晴らしいショーだった。
『今、この時代に無いものを一つのフィクションとして目の前に
自分の世界観と価値観で組み立てて見せること。』
これは、僕が思う、"ファッション・クリエーション"の現在とは、この一言に尽きる。
その"ツモリ・ワールド"はミレニアム世代以降の若いデザイナーたちには出来ない世界である。
「服」に対する想いの深さが違う。
従って、1着の服に賭ける細やかさと大胆さは彼女の世界そのものである。
ただ、生地の貼りあわせでフラットなシルエットしかできない"NET. & CADデザイナー"世代
では創造不可能な多種多様なニッティングとエンブロイダリーの各種、スパンコール、
キルティング、オリジナルグラフィックスと染め加工のバリエーションなどなどまさに、
多種多様の"手工芸のミックスデザイン"なのである。
それに今の若手と称されるデザイナーたちは"ドレス"がデザインできないのか?
自分がドレスを着たことがないからドレスをデザインしないのか?
もちろん、パターンメイキングが出来ないこともあるだろうが,
彼らたちのコレクションを見ても、ほとんど"ドレス"が少ない。
分かり易い,"上モノと下モノそして、インナー"というコーディネートコレクション。
ということは所詮、"売れるモノ"に気を使ったコレクション或いは、"OEMコレクション"の
世界が今の「東京コレクション」の実世界でしょう。
3)『根幹は「愛あるコレクションであり、愛を想うコレクション」』
「35年分の感謝」コレクションの世界は変わらず、そんな輩たちと対峙した世界でしかない
「愛あるコレクションであり、愛を想うコレクション」。
"軽く、明るくそして、ロマンティック"にまとめられ今回は削ぎ落とすものは削ぎ落とされた
「ツモリ・ミニマル ロマンティックコレクション」。
オーガンジー、シフォン、ビーズとスパンコール、フリルとシャーリング
それらが、今の時代の雰囲気で、いいバランスにダイエットされ、"地球を想い、地球に気遣い、
自然を慈しむ"デザインコンセプトも彼女の倫理観であり、上質な時代感を醸し出した
"ツモリ・ワールド"だった。
僕がこの「35年分の感謝」のコレクションを飛び込みで見せて頂き、改めて感じ、
ホッとしたこの"ツモリ・ワールド"とは、
「大人になっても着られるファンタジー」+「ツモリしかコーディネートできない世界の凄さ」+
「服に合わせて靴と靴下それにスカーフetc.までデザイン出来るデザイナーの力量さ」+
「やはり"トータルコーディネート"世代のキャリアに衰えはなくむしろ淘汰された洗練さ」
だった。
4)『ありがとう、ツモリさん。』
「時間はいっぱい在ります。
美しいものを作ることが本質。
では、美しいものとは何なのでしょう。
その答えは自分自らの中にあるでしょう。
美しいものを誰のために創るのでしょうか?
メディアのため?学校のため?金のため?名声のため?自己満足のため?
結局は自分自身が自分らしく生きてゆくための責任のためでしょう。
そして、自分が創った美しいものを喜んでいただける
質と格と美意識を持った人たちの笑顔のためでしょう。」
5)『エピローグ』:
僕の好きなJohnとの再会。
彼はN.Y.在住のスタイリストだった。
「ツモリ・チサト」のコレクションのためにだけパリで仕事をしていた。
そんな、パリでしか会っていなかったJohnと、7年ぶりに今回、彼と東京で思いもかけない
再会が出来た。
この歳になってのこんな"サプライズ❣️"は至福なハプニングでしかない、
ありがとう、ツモリさん‼️
合掌。
文責 /平川武治。
初稿 / 2025年09月09日。
文責 /平川武治。
初稿 / 2025年09月09日。
投稿者 : editor | 2025年9月21日 12:29 | comment and transrate this entry (0)