« 東コレ雑感ー『TOKYIOーCOMPLEX』−2 & 傍観者の眼差し−2 | メイン | LePli-創刊準備0号、発刊! »
「 東コレ雑感ー『TOKYIOーCOMPLEX』−3」
『 もう一つの日本ブランドのあり方。』
『モードのショーケース』のキャピタルとしてのパリへ、このところ2年ほどで多くの日本人デザイナーたちの直接、個人参加が増えている。彼らたちのパリ参加への形態を分類してみると、
*従来からのショーをやり、その後自分たちのメゾンで展示会を行っている既に、世界のブランドの仲間入りしているブランド。それに、ショー後はパリのディストリビューターオフィスに委ねての展示会をしているブランドもこの分類にはいる。
*独自で展示会会場を借りて、展示会だけをやり始めたブランド。
*増えた現地の『サロン』(パリだけで現在では13サロンが開催されている。)と称される完全に商業ペースでオーガナイズされてしまっている合同展示会会場の自分たちのテイストとレンジが合うところへモノと自分たち自身が行ってブースを借りて出店する初期的な構造の参加組。
大きく分類してもこの3パターンであろう。
即ち、ディストリビューション機能の『内蔵メゾン』か『外つけメゾン』の違いでの現地営業活動であり、これはそれぞれの予算と人材に関係しているだけの違いだけである。これは、取りも直さず現地のそれなりの人たち、ジャーナリスト、プレス、セールスエージェントなどのとの関係性が作品としての『服』を通じて出来上がっている日本ブランドであるか、『お金』と『度胸』(ノリの良さ)だけを持って現地の作られた商業べースの構造の中で、”ウケる”即ち、売る事だけの世界へ入るかの入り口の違いを読まないと勘違いが起る。
彼らたちの現地評判は、バイヤーたちにどのような受け取り方や格付けがなされているのか?商売中心に考えるとこれからもっと、『売れる』可能性がある日本ブランドという感想。決して、”メインブランド”としての商品ではないが置いておくと売れてしまうというサブ的なもの。これは価格帯と売れるデザイン性そして、デリバリーからだと言う。
では、彼等の利点と欠点すなわち、日本のこのレベルのファッション産業のインフラ的なるものとは、日本のファッションビジネスの利点と欠点を考えると、
*素材が豊富。特に合繊が今はいい。
*まだ、国内生産に頼れる構造が残っている。
*出来上リのクオリティが悪くない。
*デリバリーがきちんとしている。
*クリエーションにおける冒険はあまりやらない。
*売れ線、トレンドものでまとめ、それしか作らない。
*ONE POINT DESIGNがうまく出来る。
*手先の器用さでSPECIALやONE POINT DESIGNがうまくこなせる。
*ファッション教育が普及している。
*日本国内の市場が大きくそして、何でも有りの節操がない動き。
*国内メディアのホロがいい。
*消費者が成熟している。
*コーディネートファッションは上手。
*プライス面がこなれている。
*即ち、『CONSUMING DECADENCE』な社会環境にドップリである。
これらの要素と現実が確実に自分たちの身体的規模でそれなりのリスクを張って楽しみに行く、毎シーズンに出会えるバイヤーたちとの”お友達”関係のノリで彼らたちと関係性を作ってゆく事でその結果が、何を彼らたちが欲しがっているかを理解して、帰ってきての国内生産でこれをホロしている。従って、バイヤーたちには都合がいいお利口さん日本ブランドなのである。
しかし、彼らたちの今後の課題は”将来性”をリスクを張って勇気を持って指差すことでしかない。これがパリでは大事なブランドアイデンティティへと繋がり、この街のモードの世界での本質的な関係性が出来上がって行くのだが、彼らたちはその手前で、無難なところと彼らたちの本質によって、総体に売れるものをきちんと作る事がうまく、それ以上の勇気ある冒険、可能性そして、独自性を独自で”リスクとコスト”を堂々と張って、打ち出しているこのレベルと、規模のブランドはまだ少ない。
きっと、ブランド意識の方が強くそれで儲かってゆけばいいという発想が此の手、展示会参加組には多い。ここではデザイナー志向を持った若手が少ないのが現実。スペシャル性とアヴァンギャルド性そして、クラフト性がハイレベルにバランスが取れ、実際に着れる服、着てもらえる服のコレクションをやっているデザイナー意識の高い若手デザイナーブランドは現在では、UNDER COVERそして,SACAI,TOGA,へと流れが続くぐらいのものであろう。
では、彼等たちと肩を並べる若手外国人デザイナーたちは 彼等たちはどのような眼差しで見ているか?
ここ、パリまで独自で来るブランドであるからそれなりの資金的な現実が先ず、外国人若手より有る。それにジェラシーを感じる。それと生産構造が身じかでしっかりしたところがまだ、残っていると言う国内現実を利用し実際に商品を作ることと、そのクオリティを保つ事等が難しい彼らたちには、とっても羨ましいことなのである。その結果、デリバリーにも影響が出る。
この自分たちの身体的規模でのパリサロン・商業的展示会への進出組の結論としては、現在の、ある種のNew-Generationsたちは完全に『CONSUMING-DECADENCE』の落とし子たちである。従って、ファッションを売る事、売りたいという事には早熟でありこの15年程でかなり成熟した日本ブランドとなっている。特に、男物は世界に通じる事が可能強いのが現在だ。
彼らたちの世界そのもののサンプリングに『裏原』系の総てが有る。それに、劇画、アニメ、TVゲームそして、MTVからのイメージングソースは今や世界規模で共通のコンテンツになっているので女物のテイストやモード観の違いがまだ存在する世界よりはやり易い。弱点は、ビジネス構造としてのスタッフ人材に弱い。これからは彼らたち、世界に通用する成熟度とセンスを持ち備えたファッションビジネスマンの養成教育が課題である。
ある意味で中途半端な作り手志向教育よりも今は、ビジネス力つける教育を行う事が大切な鍵。極論を言えば、『イメージを数字に置き換えられるセンスある人材』がほとんど皆無であるのが今の日本のファッションビジネスの現実である事に目覚めなければならない。例えば、自分たちが作ったものがサロンへ出店するまでは、
『どんなものをどんな人が買うか?』が解らないまま、自分たちがサンプルを抱え持ってサロンへ進出しているブランドが殆どである。が、彼れらが強くなってゆく可能性は日本的なる『甘えの構造』のうちでの『東コレ組デザイナー』たちよりも大いに在ると感じる。
その可能性を現実化するためには、自分たちのクリエーションに『リスクとコスト』をオリジナリティ高く、インテレクチュアルに、勇気を持ってかけられるか?すなわち、『今日の雰囲気』だけではなく、どれだけ『明日を指差すか?』もっと難しく言ってしまえば、服の『表層』だけを作るのでは無く『深層』をどれだけ深く読んでデザインが出来るかに掛かっている。『表層」としてのメディアに左右されない『深層』を感じ読めるかが彼らたち、外国人が指摘している『インテレクチャー』という意味であリ、僕の言っている”成熟度”である。
彼らたち、多くの日本ブランドの図式を考えると、オタク=STUDENT-CONSUMERS=販売バイト/フリーター=オリジナルもの=プリントT-SHIRTS、靴、帽子、アクセサリー、皮小物、シルバージュエリィー、=トータルブランドへ、=夢としての海外進出。=コンセプト『お友達』なる関係性。これが彼らたちのある種の『リアリテ』であり彼らたちはまず、彼ら自身が消費者であった事が強いリアリテになっているはずである。一方で、レベルそのものは別として『専門』学校出身者が多い事も現在のこの世界を生み出している。卒業生たちはミシンが在る事と先輩、後輩の人材としての日本人的なる(?)関係性。
それとこの7年間程で、この世界も海外留学生が増え、彼らたちの一部は帰国後やはり、海外を目指し始めた。それによっての語学力の進化も大きな要因。世界スタンダードを、マナーを身につけ始めたとも言える。
/文責;平川武治: