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『H&M ファッション黒船』到来 !!

[H&Mは本当に、そんなにすごいのか?]
『H&Mの実質戦略を読む。』
知っておこう、これがファッショングローバリズムの今後の世界戦略:

コンテンツ】
1)日本市場への参入とイメージング拡大の広告世界戦略。
2)中国市場拡大化のプレ戦略。
3)『ストリート・ジャパニズム』といわれる日本発のリアル・ストリートファッションの
  世界へ向けてのMD化戦略の現地収集と発信化。

キーワード】;
グローバリズム、トレンドの賞味期限切れ、アウトレット、イミグレーター・カラード、新・大衆、少子化現象、「トレンドの衣料品化」、W・スタンダード、ストリート・ジャポニズム、逆MD戦略、世界イメージ戦略、広告宣伝費、メディアコントロール、、、


 先ず、この現象。9月13日以来、ファッションに敏感だと自称している決して、お洒落ではないそんな連中たちはもちろん、ファッションメディアばかりでなく、諸手をあげてH&Mイメージ戦略に引っ掛かっている日本メディアの恐ろしさに気がつこう。まるで、『ファッション黒船』到来の状況である。シングル・スタンダードで生きてきた平和な僕たちにとっては、ファッション・グローバリズム時代の黒船到来かも知れない。H&Mは本当にそんなにすごいのだろうか?

 この「黒船」と戦うのは誰なのであろうか? 先ず、H&Mのターゲットが日本では何処なのか?それによって、ライバルも変わるでしょう。 
彼ら、H&Mのメインターゲットはヨーロッパを中心に調べてみても、移民・カラードたちの新世代の若者たちであることを知っておこう。これは、端的な表現をしてしまえば、あの『Mr. New President OBAMA』の登場とも同じコンテンツである。これが現代という時代性を構築してゆく新社会構造であり、グローバリズム以降のアメリカやヨーロッパが持ちえた社会構造の新たな変化、新たらしい大衆消費社会の新人New Generationsたち、『新・大衆』の登場である。これは、かつての、『植民地時代』のパラドックス化。グローバリズムが『新・植民地主義』であると称される本意の一つがここにある。自国内にイミグレーターたちが完璧な入子構造化が構築されてしまっている。

 彼ら、イミグレーターたちやカラードたちの新世代たち、『ニュー・ジェネレーション』による『新・大衆』が存在しない日本の消費社会では、時代が変わってもターゲットの本質が変わらないですから依然、「世代間+テイスト」で斬る人口比率のMD発想でしかないのが現実の日本の消費環境でありこの中へ入れ込むにはイメージングとメディア戦略でしかない事情。だから、僕的に言えば彼らたちの本当のライバルは『ユニクロ』よりはむしろ、『09』『ZARA』『ラフォーレ』的なファッション感覚に目聡いがお金がそんなに使えない、使いたくない層がメインとそして、最近増えつつある『アウトレット』との競合化でしょう。喰われるのは国内アパレル系のブランドとセレクトショップ系のオリジナルブランド層がライバルでしょう。『ユニクロ』とはオリジナルなカテゴリーと商品の育ちが即ち、「べーシック」が違いますので立ち上がり期はライバルとなりますが、最後は日本的な折り合いの中でGAP化、即ち、かつてのGAPのような末路を辿るでしょう。 

 年代でいえば、30代そこそこまでのOLと学生、フリーターレベルでしょう。この世代は『少子化』で人口が先細りしている構造でイメージには強い層。彼らたちをどれだけ話題性とイメージ力で捕まえておけるかがH&Mの寿命でしょう。それに忘れてはならないのは中国、台湾、韓国からの観光客も大事なターゲット。

 今、日本のデパートにファッション顧客がいるのでしょうか?デパ地下顧客はいても?デパートのフロアー構成が日本のアパレルの縮図構成でしかない以上は今後、未来は大変な状況でしか?? だから、本当は日本のデパートがこのH&Mレベルを「お気軽ものトレンド」として、餡子の様に真ん中においてその上に『ラグジュアリー系』、その下にコンビニアンスな感覚の『美的生活デザインガゼット』そして、『デパ地下』という単純なコア4層構造方式で今後のデパートの基本的構造は決まりでしょう。後は、それぞれのコアのテイスト細分化で作れるマドリックスがデパートでしょう。

 今後の日本のファッションビジネスの発展性、許容量はもう残念ながら'90年代の様な延びはありません。なぜならば、外国のように日本国内には戦後の政治的配慮から、異民族(イミグレーター/カラード)が共生している社会環境構造が皆無に等しいからです。従って、主軸はいつの時代も変わらず、新たな人口が増えない限り、このS・スタンダードに限界があり許容量が読めます。理由は、若い層の人口が増えない。ファッション学習はますます進化しイメージ先行より、バーチャルな世界へ、反面、トレンドの賞味期限は切れる。経済不況が続く。これらが大きな原因でしょう。

 H&Mが海外で成功した要因は移民たちによる新世代ターゲット、「新・大衆」が誕生したことと「トレンドの賞味期限」が切れ始めてきたこと。そのため、「トレンド」はマークダウンして売らなければ売れない、そして、グローバリズムという時代性を背景に熟知したファッションメディアを使った、イメージング世界戦略によるものでしか有りません。かつて、アニエスB続いて、APCの登場時は「衣料品のトレンド化」でしたが、今は「トレンドの衣料品化」までトレンドの鮮度が低下してしまった「豊かさの蔓延」現象。
そこではトレンドそのものの価値が虚像化してしまった時代性をうまくコンテンツにディレクションしてきた頭のいい、グローバリズムなファッション企業がH&Mです。しかし、ユニクロはいまだに「衣料品のトレンド化」のカテゴリーです。ここが育ちと『W・スタンダード』の違いです。

僕たちが昨年の7月に巴里で発行した、世界でモードを学ぶ学生たちをメインターゲットにした新しいモード・カルチャー誌『Le Pli』の創刊0号がまさにこの現実を一足先に予告したかのごとく、特集として組み、そのグラビア特集ではすでに、H&Mとコムデギャルソンのミックスコーディネートでイメージペイジを構成した。(フォトグラファーがマルタンを撮り始めたロナルドでスタイリング、村田明子)これは彼らたちH&Mに大いに影響を与えたはずである。結果、この東京進出に当たってH&Mは確りと、コムデギャルソンとコラボレーションを行い、その話題性を作り、以後、ご承知のメディア状況である。(このコラボはH&M側からCdG側へリクエストされて出来たプロジェクトであり、一足先に行われたCdGとLVとのコラボは川久保さんからLVへ持ち掛けたプロジェクトであった。)

 今、巴里のオスマン通りにある大型H&M店では奇妙な現象が起こりつつある。
あのコムデギャルソンとのコラボ商品がこの巴里の黒人たちに人気が出て、彼らの大きな体型にカーブしたロゴ、”COMME des GARCONS”がクリスマス商戦さなかに増え始めている。
CdGを黒人たちが着る。これは今までになかった新たな客層がこのコラボレーションによって出来上がったという、東京では考えられないグローバルな現象結果であるのが面白い。この新たな関係性は今後もしばらくは続けられるだろう。

 だが、東京におけるH&Mはそんなに気にすることはないでしょう。GAPを見れば解ります。デビュー当初のパワーが何年続きましたか?残念ながら、6年も続かなかったはずでしょう。(これは通常の日本ブランドのデヴューブームの2倍はありましたが。)日本人の目新しさ好きとめずらし物好きと外国コンプレックスで何年奔れるかが、本当のところでしょう。  
 
 それと共に、彼らは日本上陸と共に日本からの、渋谷、原宿界隈からのMD情報を逆輸入して世界戦略に利用することにも高いプライオリティを置いているはず。ストリート・ジャポニズムをMD化して、H&M発で中国アジアと世界へ向けて発信する方が最後には金になるという魂胆。H&Mも今後の中国拡大作戦の一つに日本をターゲットに味方にしなければならないと知っています。(現在、7店舗が現実?)日本で話題性を作り、それでそれなりの商売が日本で展開出来、その裏で日本発ストリートトレンドのMD情報と新・素材情報をも収集して、世界発のこのブランド・レベル(カラードたちと中国アジア)へマークダウンしたトレンドをH&M流に発信してゆくことの方に本意があり、プライオリティを置いているはずと読みます。

 その証拠に、彼らが立地する場所、銀座、渋谷、原宿?を読んでください。ここにも、彼らたち流の『W-スタンダード』が読めるはずです。
原宿は『ラフォーレ』の並び。渋谷は『09』の向かい側。銀座は『腐っても鯛』の銀座でのイメージ拠点。

 これに、ラグジュアリー系ブランドが使えなくなった、もう余り使われなくなった日本での『広告宣伝費』を今回もまだユーロ高期にこれ見よがしに使っての日本メディア構成。そこへあの、CdGをも巻き込むという強かで、見事な世界戦略の実施ですね。

 海外では、上記の『新・大衆』をマーケットにしたい場合は『漫画、アニメ、ケイタイ、TVゲームそして、MTV、HIP HOPとプロ・スポーツ』が彼らたちへの重要な世界規模でのファッション・コンテンツ。日本の平成生まれたちはもうこの漫画、アニメ・ゲームのオタク・カルチアー世界がファッションの世界へ直結している世代なのです。

 今後、カラードたちとアジアを中心に世界へ向けてのファッションをビッグ・ビジネスと考えるならば、彼らたちは当然の如く僕たちの東京に停泊し、『トウキョウ・ジャポニズム』から新たなコンテンツを学習するしかないであろう。このH&Mの陰になってしまったが、『TOP SHOP Japan』もロンドンから上陸しラフォーレとのタッグ戦略化。また少し先立ったが、フランス投資会社が『09』の2ブランドを買収したのも、多くがこの端的な『3つの目的/H&M戦略』を周到、実施しているだけである。

 
 だから、この辺で、僕たちの「日本人としてのアイデンティティ」をこのファッションの世界でも意識しなければこの継続性はありえません。
これからは日本発がトレンドというまでの僕たちの自信と今の時代感での『ジャポニズム』を意識するべき時代です。
―ファッションにおける『黒船』、H&Mも上陸したのだから。

 (注)S(シングル)・スタンダード;自分の国での成功事例によって、自国の価値判断だけで十分であるという狭義な常識と現実しか持ち合わせていないこと。(最近の若者に増えつつある。)
    W(ダブル)・スタンダード;自分の国でも、また世界のどの国へ行ってもそこでの価値判断は複数であることを経験と認識の上で理解していること。グローバルな世界観には必要な発想。

 『Le Pli』0号は完売。
現在、『LePli』No.01号をUNDER COVERのサポートにより発行準備最中。
特集は『CARE』。プロテクションし過ぎ始めたことに気が付かなければ、次なる世界観へ至れない息苦しさをみなさんは感じていらっしゃいませんか?モードの世界によって僕たちの身体とこころを『CARE』するまでの慈しみさがデザインというシナリオで、『こころに優しく、身体に快適な服を考えましょう。』というコンテンツです。どうか、もう少しお待ちください。そして、ご期待を。
(やはり、資金不足で、もう、1年、遅れたしまいました。お詫びいたします。すみませんがもう少しお待ちください。) 

追記;
    前回にZUCCAのところでYOHJIのブチックがまだ出来上がっていないと書きましたが、今回この街へ戻ってきた今現在、やっと、オープンをしました。これも彼の『思いと夢』の現実化。
 "あの、カンボン通りに僕のブチックはあるんですよ。" ーおめでとうございます。
 
 思い出すに、'80年代の半ば、所謂DCブームとやらが叫ばれたころを通過してきた世代が往々にして持ちえた共通なる思い、それが、もう一方のブームのディーバであった『シャネル』と『フィオリッチ』。
今でも、結構これにひかかって此処まで来た日本人それなりの世代デザイナー諸氏は多いはずだ。

文責/平川武治:


投稿者 : take.Hirakawa | 2008年12月08日 16:25 | comment and transrate this entry (0)

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