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今日のCOMME DES GARCONSの巴里コレクションを見て想ったこと。

 巴里コレクション’09/'10-A/Wにおける今日の『COMME DES GARCONS』のショーは久しぶりに深くゆっくりと感動したコレクションだった。
 その作品群は近・未来観を確実に感じさせる想像性豊かで、人間味溢れる距離感から丁寧に穏やかにそして、細やかに着る女性のために素材が選ばれ縫い合わされ、それらを自由な優しさの発想で着る女性を想う心でデザインが為されたコレクションだった。そこに僕が以前から考えていた『CARE/CURE』という新たなコンセプトが彼女によって見事に時代を先取りし、具現化され始めたと読んだ。

 世界恐慌の時期であるが、時代は確実に新たな可能性を、それぞれが持ち得た関係性の継続のために委ね始めたと読めるであろう。
もし、自分が勇気を持って与えられた自由さをその創造性の為に使うならばいつの時代も確実に新たな可能性が創造される。

 この日の朝、9時半という早い時間に行われた『JUNYA WATANABE』のショーはオペラ『トスカ』の頭と終わりの部分を趣味良く、気分よくそれ以上に新鮮なコスチュウムとして出てくるもの皆が、「It's so special!!」なコレクションだった。
時代の捉え方と女性への想いと自らが持つ創造性を彼もまた、見事に明日からそれなりの女性はきっと待てずに着たくなるまでの服に仕立て上げ、演出されたコレクション。この彼のデザイン性の根底にも『PROTECT/PROTECTION』から『CARE/CURE』というこれから主流になろうコンセプトが読める。

 僕が想う『CARE/CURE』とは、これからのモードが馬鹿げた騒々しいバニティーな一方向性から、着る女性を優しさのジェンダーへ、人間的なる次元へ、『健康、安心、安全とそのための快適性』へ向かうこと、そして、それらは新たな服が持つべき『役割』であり『機能性』であると考えるまでのデザインコンセプトが『CARE/CURE』なのです。このコンセプトをどのような素材を選び、加工し、合成してそれらをどのようにデザインするか? これがこれからの新たなモードに求められる豊かな生活者たちのためのデザインコンセプトであろう。
 
 自分たちが着たい服を着ることによって、身体と心と性を健康、安心、安全とそのための快適性を与えるまでの発想が必然的な時代性となるだろうという考えなのです。
単純に考えてみると、ジーパンが50年代に作業用の衣類でしかなかったのが’60年代終わりから音楽というメディアと伴により、一般化し始め’80年代にはファッション化されそして、現代までに受け継がれていることを改めて考えてみるとジーンズはまさに、この着る服によって、『健康、安心、安全とそのための快適性』を主軸にデザインされ続けられてここまで来た完成品といえるだろう。

 今後のモードにおける新たな創造は素材ありきの世界になってしまう。
着る人間性を考えた、身体と心と性のために『健康、安心、安全とそのための快適性』を思う時、どのような素材を選ぶかが先ず、第一の大切な初期創造である。素材に可能性を委ねるデザインがしばらくは必然的な創造性へと導くであろう。タダの形骸的なデザインはもう疲れる。

 このような近未来のモードへの眼差しを持った僕は今日の『COMME DES GARCONS』のコレクションはその先駆けであったのでより、深く、静かに感動してしまった。
 ”ありがとうございました、川久保玲様。”


【参考】ーーーこの原稿はほぼ、2年前に書いた雑誌[Le Pli-1号]のためのものです。
特集『CARE/CURE』
プロローグ;

  「 心ある贅沢は安心をまたは、豊かさを『CARE/CURE』する。」
 
『星の王子さま』を読みましたね? 毎日、自分の大切なものに、育てる責任と喜びを、想いをそのために毎日、小さな木に『水』をやる王子様。 これが『CARE』の初元でしょう。そしてその行為が『幸せ』 何のために『CARE』をするのか? 『継続』のためです。 それぞれが想い持ち得た責任と行為の対象としてのその当事者でしか理解出来なくても良い『関係性』を『継続』させるために、 ぼくは『CARE』を考えています。

**
 私たちが生きてゆく間には、いろいろな、たくさんのすばらしい人たちとの出会いが在り、そこに彼らたちとの共有できる贅沢な時間があって、 それが何らかの形で自分の為すべき事、他者に出来る事としての『仕事』に関わって行く。 この『関係性』が大切です。この繰り返しが大切です。 僕たちが生きて行くという事の確実な根拠性の一つです。

***  
 今、僕はキリスト教よりもキリスト自身が何のためにあのような行為をしたのだろうかを考えます。
その一つの答えに『関係性』が在ります。
これは多分、総ての宗教の根源の一つでしょう。
何よりも大事なのは個々の『関係性』の積み重ねです。
その中には神との関係もあります。 イエスは、『関係性』が総てである事を身を以て示しました。 あくまでも人と人との『関係性』=『愛』と言い換えてもいいと思います。---が総てである事を身を以て示そうとしたのではないでしょうか。  
 つまり,イエスがやろうとした事は,人間が作ったものである「国家」や「貨幣」に,逆に支配されてしまっている状況を『関係性』によって破壊しようとした。それを貫くには磔になって死んだ方が後世までも伝わり効果的であると判断したという事です。
そこに信仰心が生まれたのです。

****
 「CARE】することとは?
一番単純な形としては「水」をやることだと想います。
豊かさを享受された社会に育む個人、個人は“より豊かさへ”という自己拡張のための自己確認行為へ「水」を施す。

*****
 時代性は『保守化の上書き』。
消費文化という価値観の元での与えられた気概は興味,好奇心の拡大化、肥大化とそれらのガゼット化とキッチュ化。このような時代性の元における一番大切な究極の『関係性』とはより確かさを欲望する。
一つは、人間としての“肉体と心”そして、”自然”との関係性。他方,大切なのが友であり、恋人であり“家族”という『関係性』ではないでしょうか?
それらの『関係性』は自分にとって大切なもの、重要なもの、信頼すべきもの、可能性あるもの、便利なもの、不思議なもの、楽しいものそして、愛あるもの、心あるものなどいろいろなレベルの『関係性』があるでしょう。 そこで自分が持ち得た、または、結果、選んでしまった『関係性』をどのように『継続』させて行くか? 関係は友人、恋人、会社や都市、この最初に『家族』が在るのでしょう。
また職業もこの『関係性』から生まれるものでしょう。
 
自分自身の内なる『関係性』を求めながら、その自分が大切にしたい『関係性』しなければならない『関係性』を対=人間、時間、空間、それに自然と季節感や地球と人間としての「五感」そして、モノ=。
これらとどの様に関り『継続』してゆくか,行かなければいけないのか?そのためにはどのような,どんな『CARE/CURE』が必要なのか?
自分にとって大切な『関係性』を『継続』させて行くための心在る、思慮深き行為の一つに『リピート』という方法としての行為があります。 その行為を与えられた時間としての『生』において、どのように具現化して行くか? これが、人が言う『人生』なのでしょう。 僕はここに"CARE"という言葉を感じました。
自分らしい行為としての責任ある『CARE/CURE』は自分が望む大切な,大事な『関係性』を唯一、昇華させ継続させる目的であり、手段でもあるでしょう。

 『 心に楽しく 身体に優しく。-CARE/CURE 』  

 「豊かな生活」を継続してゆくためのデザイン。
「豊かさのためのデザイン」から「豊かさを継続してゆくためのデザイン」を考える時代へ。
では、どのようなデザインが欲望されるのでしょうか?

その時,『創造性』と『装飾性』はそして,『機能性』は何を新たな価値観として、“ニュー・スタンダード”として考えなければならないのでしょうか?
何が「デザインの本意」となるのでしょうか?
『不変なる身体』と『欲望』の関係性からの『継続』。
その為にしなければならない新しい時代に生きる人間として考え、行為する為に、
モードの世界に於いても『CARE/CURE』を考えませんか? 

「 心ある贅沢は安心をまたは、豊かさを『CARE/CURE』する。」

******  
 「 彼は自分自身の好きな対象を培い、養い、そして面倒を見て世話をする。 
対象それ自体を豊かにしようと努め、自分の好きな対象との間に築かされた関係性によって自分自身を培っていこうとさえする。」
これこそが『象徴の関係なのです』
出典/『愛好者(AMATEUR)』をめぐって。 デジタル デヴァイスによる『クリティカルスペース』創出の試み:ヴェルナール スティグレール/11th. July ’07/東大駒場キャンパスにて:

エピローグ;
 ポッチェルリの「ヴィーナスの誕生」を思い描いてください。
中央に誕生したばかりのヴィーナスが、その左右に若きミューズが見守っています。
その右側のミューズの行為の心は『CARE/CURE』そのものです。
美しい花の刺繍が施された上質の布を誕生したばかりのヴィーナスへ。
文責/平川武治:Dec.'07

投稿者 : take.Hirakawa | 2009年03月08日 08:01 | comment and transrate this entry (0)

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