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NEW-3 :WWD Japan 「東コレ・アンケート回答とプラス雑感。」

 今シーズンの東コレは友人のバーゼルの工科大学のファッション科の主任教授が来日していたので一緒に廻りました。でもそんなに多く見せていただいてはいません。若い人たちを中心に見ました。
 ぼくはすべてを見ていないので貴社の企画の『ベスト3を選ぶ』には不適当な回答となるでしょう。

 また、この様な「ベスト」を選ぶことには多少の疑問があります。それはビジネス業績や企業規模それに企業形態の違いがあるのにステージでの見えている部分でしかの判断の結果としての「ベスト」選びは「大いなる勘違い」を生むから僕はこのレベルでのこの様な企画はメディアの興味本位即ち、売り上げを狙った企画でしかないと想っているからです。

[コレクションを見るときの基準]: 
 僕が世界レベルでデザイナーのコレクションを見る時の『基準』があります。
1)クリアティビティ:
 時代観と美意識をバランスで診てそのデザイナーのオリジナリティを読む。
2)クオリティ:
 どれだけその服が美しいくクオリティ高く出来上がっているか。
作られた服に対する気持ちのクオリティと技術面からのクオリティ。
3)イメージ:
 デザイナーが感じる時代観とその雰囲気や気分をどのようにイメージングしているか?そのアイディアと独創性。
4)ウエアラブル:
 着れる服であること。時代が求める機能性や汎応用性をも含めた着れる服であること。ここで僕はファッションはアートでないという視点を重視。着る人の心や気分そして環境や風景とのバランスを感じ読む。
5)プライス:
 当然ファッションもビジネスであるため、モノに見合った価格が大切。ここではどれだけそのデザイナーたちがプロであるか?を読む。
身勝手な自己満足におぼれたデザイナーはここで落ちる。

 この5つのポイントで東コレを見てしまうと、、、
それに僕は「ベスト」という順位をつけることはこの東京ではナンセンス。ただの趣味の悪いお遊び。レベルの低いメディア側の自己満。

[「フラボア」「TOGA」と「DRESSCAMP」]:
 そこで僕が観たものでこの基準に沿って高得点なメゾンをあげさせていただく。
  「フラボア」:このデザイナーの自由さが程よく新しさになって服に現れていた。何か、人と違ったことがしたいという基本的なデザイナーである前の作り手としての心が在った。
  「TOGA」:このデザイナーのショーは不参加。展示会でのヴィデオと作品を見て。
 しっかりとビジネスをも考え自分の世界観を持って、成熟してきたデザイナー。 全体のコレクションの作り方もうまくなった。3人で自分たちの作りたい服を作りながらのメゾンのスタートを知っているのでよく成長したと想っている。ビジネス的にはこのメゾンが一番企業構造も安定していると想っている。世界へのチャンスもあり???
今後の課題は彼女が持っている『根っこ』をもっと豊かに深いものにすること。

 僕の合格ブランドはコレだけ。きっともっといろいろ可能性のあるブランドが僕は見なかったが在るのだろう。
 後、印象に残ったブランドは「DRESSCAMP」:
 今の東京をある意味で代表しているブランド。
『悪趣味』が蔓延している東京とその時代性をこれ程までに見事にイメージングして気持ち悪いほどに堂々と明るくショー化しているこのデザイナーの「東京ポジティフ」が面白い。好きなものがはっきりとしたコレクションは気持ちよいが、いつまで続くかが問題。今後もう少し自由さと謙虚さそれに彼も自分の「根っこ」をもっと成長させなければいけない。このままでメディアに勘違いさせられると唯の、「東京芸能人ご用達スタイリスト向け悪趣味デザイナー」でしかなくなる。

 ここに上げた3組のメゾンはそれぞれ企業形態がっている。すなわち、『育ち』が違う3組のメゾンである。コレは東京的な面白さと特徴である。
 
 「フラボア」は東京DCの元祖ある(株)BIGIの一ブランドデビジョン。「TOGA」は自分たちが作りたいものを作ってゆく最小規模から始めたメゾン。
「DORESSCAMP」はプリント素材メーカーが親会社で、このデザイナーは今でもこのプリント会社の社員を10数年歴でありここでも給料を貰い、御報美的とこのプリントメーカーの企業戦略によって自分のブランドを持たせてもらったデザイナー。
 こうしてこれらのブランドの企業背景を調べても当然、企画環境もビジネス構造も違っているから今後の成長への規模や期待が違ってくる。

[「MINA」「NEMETH」「VOLGA  VOLGA」そして、「ミントデザイン」]:
 いわゆる、世間一般的な「苦労をして自分の好きな世界を築いてきたデザイナー」では「MINA」をあげる。彼の素材に固執する職人気質でのものつくりは本物であるはずだ。これに近いものを持っている東京デザイナーでは「クリストファー・ネメス」と「VOLGA VOLGA」を挙げたい。'85年にロンドンコレクションをしてその後、東京へ移住してからの彼、ネメスのこの東京での仕事振りは服職人である。'90年代初頭のストリート系東京デザイナーの殆どが彼の服をパクッてデビュー。しかし、残念ながら彼の服つくりの精神まではパクらなかったためそんな彼らたちは10年も持たずして、殆どが自爆状態である。「VOLGA VOLGA」はロシア人と日本人のペアユニット。ロシアからヨウジにほれ込んでの来日。そして3年半ほどをここで勉強してからの独立。デザイン発想の玄人らしさとそれらを商品とした服にするためのパターンメイキングがしっかりしている彼らたちも服職人的存在。奥さんである人が巴里のサンディカで学びパターンメイキングの基礎が出来た技術者である。彼らたちに共通するところは「骨太な服つくり」ができるしっかりとした「根っこ」を持っている人たちである。
 メディアをかまして、芸能人に擦り寄ったスタイリストたちに媚を売ることが引いてはビジネスに繋がると言う公式の元でのファッションデザイナーとその関係者が多いこの東京ファッションシーンではこれがリアリティなのだからこの所謂「微温湯」の中で悪趣味感覚に馴らされながらやってゆくのならそれはそれで良いだろう。儲かるしカッコもつけられるしかし、もし、違う世界を見てしまったらどうするかがその人の人間性に関る事となるであろう。
 「ミントデザイン」は好きなブランドであるが、
悲しいかな、彼らたちにもう少し野性的な強さが作品にも表れればもっと好きになれるブランドである。育ちが良すぎる分今の悪趣味東京では居心地が悪いだろう。それに少し彼らたちが作る服のフレームが狭すぎる。それによって毎シーズンの面白さに欠ける気配がするのが残念である。
 他の若手と称され、メディアを騒がしているデザイナーたちもその殆どが「丘サーファー」である。乗ること即ち、時代の流行や雰囲気に乗ることは上手でこんなことも出来ます、あんなこともしますという部類。肝心の「時代の大きなウエーブ」を造ることが出来ず唯、乗っかるだけが多い。従って、これらのタイプのブランドは3~4年でこけてしまう。

投稿者 : take.Hirakawa | 2004年05月27日 07:17